INHERENT PERTURBATION CONTRIBUTES TO ROBUST SWARM OF SOLDIER CRABS

Yukio-Pegio Gunji1*, Hisashi Murakami1, Takayuki Niizato1, Koichiro Enomoto2, Masashi Toda2, Yuta Nishiyama1, Toru Moriyama3, Tetsuya Matsui1, Kojiro Iizuka3
1Deaprtment of Earth & Planetary Sciences, Kobe University, Kobe 657-8501, Japan 2Hakodate Future University, Hakodate 041-8655, Japan 3Yound Researchers Empowerment Project, Shinshu University, Ueda 386-8567, Japan
*corresponding author: yukio@kobe-u.ac.jp
(Received December 21, 2010; Accepted December 24, 2010)

頑健な兵隊ガ二の群れをもたらす内的ゆらぎ

郡司ペギオ幸夫, 村上久, 新里高行,榎本洸一郎,戸田真志,西山雄大,森山徹,松井哲也,飯塚浩二郎
1神戸大学大学院理学研究科,〒657-8501神戸市灘区六甲台町1-1
2公立はこだて未来大学,〒041-8655函館市
信州大学,若手研究助成プロジェクト,〒386-8567上田市

(Abstract)

Previously, school, herd and swarm are explained by using a model called BOID and SPP which are based on the coupling of local potential and external perturbation. Perturbation prevents individuals to cooperate with each other to make a swarm. We here propose a model based on internal perturbation which contributes to make a swarm, in studying swarm behavior of soldier crabs. This model should have a wide applicability to study biological collective phenomena in general.

(Keywords)
Swarm, flock, swarm, collective behavior, soldier crabs, critical phenomena, scale-free correlation

1.はじめに

   脳は巨大な神経細胞の塊であり群れである.しかしそこには,まぎれもなく,一個の意識が成立している.細胞の集合体でありながら,一個の全体性が実在する.他方,鳥の群れや魚の群れはどうだろうか.数万羽から成るムクドリの群れの一糸乱れぬ運動には,一個の意識が宿り,群れは一個の生命体であるかのようだ[1].しかし我々は,そのような描像を,外部から眺める者の単なる解釈に過ぎぬと,思い直すことになる.
   近年群れは,集合知のモデルシステムとして,研究されている[2-4].家路に関する,少数個体の持つ知識が,どのように集団全体の意思決定に寄与するか.二つの知識の差異が小さいとき,知識は平均化されて集団全体に伝播し,大きいときいずれか一方の知識が集団全体を席巻する.このとき集団の意思決定とは,構成員全員が同じ決定をすること,と定義される[5].ここにあるのは,異なる知の集合ではなく,グローバルで画一的な知の統合である.そもそも群れのモデルは,行動の統合のもとに構想されたものだ.各個体は速度ベクトルによって規定され,それによって運動し,位置を変えていく.各個体は,他個体と相互作用する近傍を有する.近傍とは通常,固定された半径をもつ円で示される.最も有力なモデル,ボイドは,三つの規則からなる群れのモデルである[6].最小近傍半径では個体の密集を避け(衝突回避),その外側の,第二の近傍半径では,近傍内で速度を平均化して揃え(速度平均化),さらにその外側の,第三の最大近傍半径近傍では,互いに接近する(群れ向心化).こうして,衝突しない程度に互いに接近して速度を揃え,運動する群れが形成される.このモデルでは,各個体の速度に関する統合こそが群れをもたらす.
   近傍内の速度ベクトル平均化に特化したモデルは,SPP(self-propelling particle)と呼ばれる[2,3].SSPの時間発展モデルにおいて,近傍内平均化と外部ゆらぎを結合するとき,明瞭な相転移現象が認められる.外部ゆらぎが臨界値以下では速度ベクトルの揃った群れが維持され,臨界値以上になると群れは壊れ,集団は離散する.群れを形成する力と,ゆらぎとは,相反する性格を持つことになる.
   群れの研究はこのように,従来モデル先行で研究が進んでいた.しかしごく最近,画像解析技術の進歩により,ボイドがどの程度確かなのかが調べられ,従来のモデルでは説明できない現象も見つかりつつある[7.8].最も重要な発見の一つがスケールフリー相関であろう[9].それは強く相関する群れの部分が,群れ全体の大きさに比例して大きくなるという現象で,群れに或る種の身体性があることを示している.つまり,意識を有する脳ではなく,意識外部の現象に,集団でありながら,一個の全体性を有する対象が見つかったということだ.
   我々は,西表島の兵隊ガ二と呼ばれるミナミコメツキガニ集団の観察,ビデオ撮影,解析を通して,群れ形成の力とゆらぎが対立せず,むしろゆらぎが群れ形成に寄与していると考えるに至った.こうして得られたモデルは,スケールフリー相関を説明し,兵隊ガ二の密度依存渡河行動をよく説明し、さらに頑健な群れの固まりは論理ゲートとして使用できることを示唆する[10,11].ここでは我々のモデルの意味と簡単な結果について報告する.

2.群れのポテンシャル共鳴モデル

   我々は2008年から2010年にかけ数度にわたり,西表島船浦湾のミナミコメツキガニ(Mictyris brevidactylus)をビデオ撮影し,その群れ行動を調べてきた.ミナミコメツキガニは通常干潟の砂泥中にトンネルを掘って潜んでいるが,干潮時に干潟表面に現れ,砂泥中の有機物を食べる.この際,水際に沿って大きな群れを成し,場合によっては干潟表面に現れた河を渡る.
   我々は観察を通して,行動に関して以下の結論を得た.第一に,隔離された個体が自ら水に入ることはなく,群れもまた自ら水に入ることは稀である.第二に,群れが移動するとき,群れの内部では個体が絶えず不規則に,渦を作りながら移動し,構成員全員の速度ベクトルが揃っているわけではない.第三に,群れが水際に接近するとき,群れが低密度の場合には,まず水際に衝突し,その後水際に沿って移動するが,その過程で高密度の領域が出現すると,高密度部位から水に侵入し渡河する(Fig.1).以上より群れには内的ゆらぎが存在し,内的ゆらぎが群れ形成に積極的に貢献するという機構が示唆されるに至った.ここから以下のようにモデルを定義した.



Fig. 1. Snapshots of real soldier crabs wondering in the lagoon, Iriomote Island. Red dots show fast moving crabs. Yellow and blue dots show slow moving crabs.

   群れのモデルは格子空間上を移動する格子点を生物個体として定義された.個体数をN とし,S×Sで規定される格子空間において,S = {1, 2, …, sMAX}とする.第k番目の個体のt時刻における位置は

P(k, t) = (x, y)            (1)

で表わされ,ただしxS, yS, kK={1, 2, …, N}である.境界条件は周期境界とする.t時刻における第k番目の個体は,P 個のポテンシャルベクトルv(k, t; i), iI={0, 1, …, P-1}をもつ.とくに i=0のとき,v(k, t; 0)を主ベクトルと呼び,各個体が有する角度θk,tを用いて

v(k, t; 0) = (Int(Lcosθk,t), Int(Lsinθk,t)),           (2)

と表わす.ただし任意の実数xに対し,Int(x)Xx<X+1となる整数X を表わすものとする.Lは主ベクトルの長さを与えるものである.i≠0のとき,[0.0, 1.0]から均等に選ばれる乱数η および,定義されている角度αから導かれる範囲[-α, α]から均等に選ばれる乱数ξ を用いて,一般のポテンシャルベクトルは以下のように定義される.

v(k, t; i) = (Int(cos(θk,t+ξ)), Int(sin(θk,t+ξ))).           (3)

各ポテンシャルベクトルの遷移先τ(k, t; i)は以下で与えられる.

τ(k, t; i) = P(k, t)+ v(k, t; i).           (4)

多数のポテンシャルベクトルを各個体が有するということが内的ゆらぎに相当する.ここでは,内的ゆらぎが群れ形成に積極的に貢献するような機構,ポテンシャル共鳴を定義する.それを実装するためにまず,遷移先の優先度を定義する.任意のt時刻,任意の格子点(x, y; t) with xS, ySに対し,その優先度は

ζ(x, y; t) = | {τ(k, t; i), kK, iI | τ(k, t; i) = (x, y) ∧ (kK)P(k, t)≠(x, y) }|.            (5)

で定義される.これは個体が不在である格子点において,ポテンシャルベクトルの遷移先重複度を意味している.各格子点で優先度を計算した後,各個体は移動する.移動は非同期的にアップデートされる.移動操作の前に,全格子点において

ω(x, y; t) = 0.           (6)

としておく.アップデートの順序はランダムである.各個体においてもし,以下の条件,

ζ(τ(k, t; i)) ≥2,           (7)

(或るiに対して)が満たされるなら,かかる個体は以下のように移動する.

P(k, t+1) = τ(k, t; s),           (8)

ただしsは任意のiIに対して

ζ(τ(k, t; s)) ≥ζ(τ(k, t; i)).            (9)

を満たすものである.これは個体kにおいてポテンシャルベクトルsの遷移先が優先度に関して極大となっていることを示す.もし(9)式を満たすポテンシャルベクトルが複数ある場合は,そのうちの一つをランダムに選ぶ.アップデートの順序は非同期なので,個体の移動後の位置は記憶しておき,UN = {(x, y)∈S×S | P(k, t+1) = (x, y)}で表わす.
   条件(7)を満たし式(8)で移動する個体を能動移動者と呼ぶことにする.能動移動によって,空となった格子点は

ω(P(k, t); t)=1.           (10)

でマークされる.全ての能動移動者が移動した後,条件(7)を満たさない個体において,追随近傍Nf内に,(10)式を満たす格子点があった場合,以下のようにそこへ移動する.

P(k, t+1) = Rd{(x, y)∈Nf| ω(x, y; t)=1},           (11)

ただしRdXは,集合Xの要素を一つランダムに選ぶ操作である.式(11)に従う個体を追随者と呼ぶことにする.
    能動移動者でも追随者でもない個体は以下に従って移動する.

P(k, t+1) = Rd{τ(k, t; i) | (jK’)P(j, t)≠τ(k, t; i)∧τ(k, t; i)∉UN },           (12)

ここでK’はまだアップデートしていない個体の番号のみ集めた集合である.
   最終的に各個体は速度調節近傍M内で,速度を平均化する.

θk,t+1 = <θk,t>M.           (13)

以上の操作を繰り返すことで,時間発展を進めていく.能動移動者における近傍は,拡張された身体イメージを意味し,追随者の近傍は微小な空間を意味する.人間であっても,身体イメージは触覚と視覚の同期により簡単に変調し,空間としての近傍は時に拡張された身体となる[12-15].本モデルはそのような両義性を実装している.
    このモデルの特徴は,内的ゆらぎの存在にある.各個体はポテンシャルベクトルと呼ばれる遷移の可能性を多数有し,個体が密集せず,他個体から隔離されているときには,その中から一つ選び移動することで,ランダムな運動をする.しかし個体が密集すると,ポテンシャルベクトルの重ねあわせによって,内的ゆらぎは群れ構成個体を同期させ,群れとしての積極的運動,ポテンシャル共鳴を実現することになる.すなわち,条件(9)のもと式(8)によって移動先を決める過程,これがポテンシャル共鳴である.この過程は,個体間の相互予期を実装したものだ.
   ここでの相互予期は,非同期のアップデートで実現される.相互予期は,互いの運動,位置を予測しあって動くことを意味するものではない.そうではなく,むしろ各個体は,全体の雰囲気を漠然と読み移動することになる.各個体が,同期的時間の中で互いの運動方向を予測しようとするとき,同時に予測のためのモデルの妥当性まで評価するなら,予測自体が破綻することになる.本モデルでは,同期的時間を非同期的時間の相互作用の極限とみなし,非同期的相互作用において雰囲気を読みあうことが可能であると考え,或る種の目的論を実装している.

3.内的ゆらぎの意味

従来の群れのモデル,BOIDやSPPでは,群れ形成の力は,近傍内の速度平均化のみであり,速度を揃えることで群れが形成され,塊が維持されることになる.ゆらぎは,飽くまでも群れ形成に対峙する外力と位置づけられる.また,我々のモデルは,格子モデルではあるが,(1)各格子点に存在できる個体数は高々一個体である機構によって,BOIDにおける衝突回避を,(2)追随近傍による接近によって,BOIDにおける群れ向心化を,(3)速度調節近傍内で速度を平均化によって,BOIDにおける速度平均化を,実装しており,BOIDの拡張モデルと考えることもできる.この限りでポテンシャルベクトルの数を1としたモデルは,格子空間版のBOIDと考えることができる.
    ここでは,ポテンシャルベクトルの数を1として,格子空間型のBOIDを定義する.その上で,外的ゆらぎを速度ベクトルに線形結合したBOIDにおいて,ゆらぎの効果をFig.2Aに示そう.群れの指標として,単位時間当たりの移動変化ベクトルの極性(群れ全体の移動変化ベクトルの平均の大きさ)と,群れの密度(単位面積あたりの個体数)をとり,ゆらぎの大きさに対してプロットしている.群れ形成の力とは,速度ベクトルを揃えることで,その結果移動変化ベクトルが定向性を持ち,群れが維持されるのであるから,極性と密度は高い相関を持つ.また,ゆらぎが大きくなることで,定向性は落ち,極性と密度が共に落ちて,群れが壊れることがわかる.
    Fig.2Bは我々のモデルにおける内的ゆらぎの効果である.内的ゆらぎは,ポテンシャルベクトルの数をここでの最大値20で規格化した値である.内的ゆらぎが最小のとき,ポテンシャルベクトル数は1で,これはゆらぎ0のBOIDに対応する.ポテンシャルベクトル数が2のとき,ベクトル終点が重複する確率は極めて低く,したがってポテンシャル共鳴は起こらない.このとき内的ゆらぎは,群れ形成に積極的に貢献することができず,群れは壊れるだけだ.内的ゆらぎの値が0から少し大きくなった点がこれにあたり,群れの極性と密度は共に小さくなっていることがわかる.しかし,内的ゆらぎの大きさを徐々に大きくすると,ポテンシャルベクトル終点の重複度が高まり,内的ゆらぎは群れ形成に大きく寄与することになる.重要な点は,群れ密度が高く維持されるにもかかわらず,極性が極めて低い点である.これによって,塊としての群れが維持され,群れとして運動しているにもかかわらず,群れの内部には激しい乱流が起こり,各個体の移動ベクトルは全く揃っていないことがわかる.まさに,内的乱流を有しながら,群れは運動し,方向を変え,運動することになる.
    ポテンシャルベクトルの重複度によって,密度効果による渡河行動は簡単に表現可能である.ポテンシャルベクトルの重複度によって,ポテンシャル共鳴を起こすための条件が(7)式であり,通常,重複度が2で共鳴を起こすように定義されている.この条件を場所によって厳しく設定し,重複度で(>2の整数)ないと移動できない領域を定義すると,その領域は水溜りを意味することになる.



Fig. 2. Polarity and density of swarms plotted against fluctuation, in simulation model. A. BOID, B. Our model featuring potential resonance.

   Fig.3は,こうして得られる渡河行動シミュレーションのスナップショットである.中央の矩形領域が水溜りを意味し,=5で定義されている.したがって,一個体や少数の群れで,ポテンシャルベクトル終点の重複が期待できないとき,個体は決して水溜りに入ることができない.また群れが十分な大きさを持たずに水際に達したとき,群れは水際に沿って移動し,その後,水際から離れるような行動をとることになる.さらに水際に沿った運動によって,他の群れと合流し,乱流によってたまたま一部で群れ密度が高まり,ポテンシャル共鳴が実現すると,群れは一気に水溜りに侵入し,渡河行動を始める.渡河行動自体も,ポテンシャル共鳴の持続によって実現されるから,渡河中の群れに低密度の部分が生じ,ポテンシャル共鳴が実現できないと,群れは切断されてしまう.実際のミナミコメツキガニの群れにおいて,このような渡河行動の中断,群れの分裂は極めてよく認められる現象である.本モデルは,値の設定だけで以上のような群れ行動を簡単に説明でき,複雑な渡河行動現象に,内的ゆらぎが寄与しているだろうことが強く示唆される.
    ここでは説明しないが,本モデルはスケールフリー相関も説明することができる(またやはり二種類の近傍を用意した我々の別のモデルでも説明できる[16]).本モデルの基本的パラメータは,ポテンシャルベクトルの分布範囲を設定する角度αとポテンシャルベクトルの数Pのみである.後者が大きいほど,群れの形成・維持はたやすくなり,同じP値であれば,αが大きいほど,群れは円形となって,頑健となる.αが小さいとき,速度ベクトルの左右方向のみでポテンシャルベクトルの重複が起こり,かつその重複度はそれに寄与する個体数が少なくなることで極めて弱くなる.したがって,αが小さいとき,群れは進行方向に直交した横方向に伸び,かつ切れやすくなる.逆にPが十分大きく,αが大きいとき,群れは頑健に維持されるが,内部では絶えず乱流が起こり,その乱流を原動力として,群れは一個の生物のように運動することになる[17].このとき,変異ベクトルに関する摂動ベクトルの相関関数を計算し,相関関数が0となる距離(相関距離)を群れの大きさに対してプロットすると,群れの大きさ1オーダー(格子空間の距離で10~100)に渡り,線形関係が得られる結果が示された.これはムクドリの群れに認められる現象である,また相関距離で規格化された距離について相関関数のグラフを書くとき,同じ傾きの線形関係が,ムクドリ,我々のモデル,ミナミコメツキガニのデータにおいて得られており,これも内的ゆらぎが群れ全体の或る種の身体性の起源になることを示していると考えられる.



Fig. 3. Snapshots of our simulation model swarm. An individual is shown accompanied with its own trajectory. Center rectangle shows a pool in which the value c is higher than in any other regions. The number represents time step.

4.おわりに

   複雑系の一つの重要な論点の一つとして,自己組織臨界現象をあげることができるだろう.しかし臨界値の選択機構に対して適切なモデルは殆ど得られておらず,その要点は臨界性のみにある.BOIDやSPPでもその臨界性は最も強調される性格であり,生物的な群れは,適度な群れ形成力と適度なゆらぎとのバランスの上に実現されると主張されることになる.
    はたしてそうだろうか.臨界現象という描像では,構造(群れ)を作る力とゆらぎとは対立するものと想定され,その限りで両者のうまいバランスこそが,結晶のように静的な構造でも,単なる熱ゆらぎのような混沌でもない現象というイメージを作り出している.構造とゆらぎを対立させる理論的枠組みの中にあるのが,安定性という概念だ.安定性は,摂動を与え安定点から引き剥がすとき,元の軌道へ回帰する程度で評価される.したがって定義上,構造とゆらぎは対立する.安定性に対し,近年問題となる概念が頑健性である.安定性が力学系の構造を変えずに定義されるものに対し,頑健性は力学構造が変動しながら維持される機能的不変性といわれる.しかし我々は,群れのモデルを例に,もっと具体的な定義を頑健性に与えようと思う.すなわち,ゆらぎが構造生成に寄与しない場合が安定性概念であり,寄与する場合が頑健性と考える.ゆらぎによって安定性概念のもとで定義される構造は不断に破壊されかつ生成され,その結果,動的な構造が得られる.それが頑健な構造というわけだ.多数のポテンシャルベクトルを有し,ポテンシャル共鳴によって生成,維持される群れの構造は,まさに頑健な構造である.それは安定性概念のもとに定義される臨界的群れの描像とは本質的に異なる.内的ゆらぎが常に群れ形成に寄与するが故に,実際,外的ゆらぎと内的ゆらぎは区別できず,本モデルの群れは外的ゆらぎに対しても極めて頑健である.
   動的に維持される構造という意味で,散逸構造は極めて重要な提案であった.しかし散逸構造は,特定の境界条件のもとでしか成立しえない.より普遍的に,ゆらぎのもとで得られる動的構造のためには,ゆらぎが積極的に構造形成に寄与するような,そういった理論が必要となる.ここで述べたポテンシャル共鳴は,それを示唆する有力なモデルの一つと考えられる.

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