シンポジウム「立体構造からみたタンパク質の進化」を企画して

藤井 紀子 (京都大学原子炉実験所)

(Abstract)

   平成21年3月17-19日に京都大学原子炉実験所で開催された「第34回生命の起原および進化学会」では二つの興味深いシンポジウムを企画した.一つは奈良佐保短期大学の大石正先生と池原健二先生が企画された「生命起原研究を巡って」であり,Viva Origino Vol 37, No3にその内容が掲載されている.
   もう一つは本誌に紹介する藤井による「立体構造からみたタンパク質の進化」である.生命の起原と進化の学問領域においては我々の身体を構成する高分子物質のもととなる低分子物質の化学進化に関しては研究がよく進んでいるが,身体の中で様々な機能を果たしているタンパク質の構造に関しては進化的な観点からの研究が少ないように感じられる.生命の起原と進化学会においては初の試みであったが「立体構造からみたタンパク質の進化」というタイトルでシンポジウムを企画することにした.
   生体内で多様な働きをするタンパク質・酵素は進化の過程で有利な立体構造を獲得し,時に複合体を形成し,酵素としての役割を担うように巧みな進化をしてきたと考えられる.酵素の進化と立体構造の密接な関係に関しては兵庫県立大学の樋口芳樹先生に直鎖状ナイロンオリゴマーを基質とする酵素NylBの立体構造と触媒活性の相関について分かりやすくご講演を頂いた.酵素NylBは細菌中にある酵素であるが,エステラーゼ活性があり特定部位のアミノ酸の変異により酵素活性が著しく上昇することなどの指摘がされた.
   複合体形成酵素としてよく知られているプロテアソームに関しては京都大学原子炉実験所の森本幸生先生からご講演をいただいた.プロテアソームを構成する20Sサブユニットに関して酵母由来のものと哺乳由来のものを比較すると前者は複合体形成時に異なったサブユニットが配置されても複合体が形成できるのに対して,ほ乳類由来のサブユニットでは水素結合が著しく減少し,複合体形成ができないということを紹介された.静岡大学の八木達彦先生からは生命の起原と進化に関して単一祖先に由来する進化ではなく,複数祖先の可能性があり,原始地球上に独立に出現した多種類の生命体が独自に進化し,異種系生物間でDNA交換などによって進化してきたのではないかということを多くの事例を挙げて解説された.また,特別講演として本会会員の中沢弘基先生(物質・材料機構)に「なぜ,生物有機分子は親水性か?-有機ビッグバン説からの考察-」というタイトルでお話いただいた.地球科学から有機化学,無機化学までの広範な内容であった. 今回,お招きしたシンポジストは大変著名な先生方で,講演が分かりやすかったため議論が白熱した.企画を担当した者として少しでも会員の皆様の研究の一助になれば幸いだと思います.最後にお忙しいスケジュールの中,ご講演,本誌へのご寄稿を頂いたシンポジストの先生方に厚く御礼申し上げます.


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