APPEARANCE AND NATURAL SELECTION OF BIOMOLECULES ON THE EARLY EARTH

Hiromoto Nakazawa
National Institute for Materials Science, Namiki 1-1, Tsukuba, 305-0044 Japan
Phone 029-843-4844
E-mail:nakazawa.hiromoto@nims.go.jp
(Received November 19, 2009; Accepted December 15, 2009)

(Abstract)

     he evolution of a living organism, as well as pre-biotic molecular evolution, seems to be inconsistent with the second law of thermodynamics. When a bacterium is compared with some other higher organism, it is clear that all evolution tends to order more and larger molecules into more complex systems. The trick is the radiation of heat from the Earth. The Earth is loosing gravitational energy (~1031Joule) obtained from the accretion of asteroids during its birth 4.55 Gyr ago. Energy loss implies a decrease in entropy which in turn requires ordering of the Earth. As components of the Earth, the lighter elements such as H, C, N, and O at the surface must also evolve to larger molecules and ultimately to living organisms, so that the entire surface of the Earth is now covered by low entropy materials of life. Thus, the entropy decrease of the Earth is responsible for the evolution of living organisms. The above argument suggests a new scenario for the origin of life as well as its source, biomolecules. The heavy fall of the extraterrestrial objects containing metallic iron into the ocean would produce a reducing atmosphere thus generating a wide variety of organic molecules at about 4.0 Gyr ago. Of these, only hydrophilic and clay-affinitive molecules could have survived the environment of strong UV radiation and weakly oxidation, because they could be immersed in seawater and be adsorbed on clay particles that were finally deposited on the seabed. A recent shock recovery experiment simulating the heavy fall of meteorite into the ocean supports the scenario of the origin of organic molecules. Various biomolecules has been formed in that experiment. Therefore, the above arguments may be answers for the fundamental questions on the life why living organisms have to evolve and why biomolecules are all hydrophilic and clay-affinitive. A further scenario of pre-biotic molecular evolution can be seen elsewhere.

(Keywords)

Biomolecules, Earth’s light elements, Ocean impact of meteorite, The second law of thermodynamics.

原始地球における生物有機分子の出現と自然選択

中沢弘基
物質・材料研究機構
〒305-0844 つくば市並木1−1,
nakazawa.hiromoto@nims.go.jp



1.はじめに

  産業革命以降約200年,化石燃料の大量消費によるCO2濃度の増加が地球温暖化を生じているとして世界が動いている.しかし,“地球”温暖化は誤解か,少なくとも誤った用語である. なぜなら“大気”は寒暖を繰り返しても,“地球”は確実に冷却し続けているからである.地球に海ができた43億年前頃には既に始まっていたであろう降雨現象も地球磁場も,あるいは40億年前頃から発達したであろうプレートテクトニクスも,ダイナミックな地球の現象はみんな,地球内部の熱を地球表層に運んで宇宙に捨てる熱対流によって生じている.地球創成期のほんの一時期を除いて,地球の歴史はこれまでもこれからも冷却の歴史である.
  本論では,生命が発生せざるを得ず,また進化せざるを得なかった必然性が,この地球の冷却によって生ずる“地球の総エントロピーの減少”であることを論ずると共に,その考え方を背景に,原始地球で生命の素となる有機分子が多量に生成されたメカニズムは地球冷却史上で特異な“隕石の激しい海洋爆撃”によるものであるとする“有機分子ビッグ・バン説”を論ずる.いずれも既に拙著[1, 2]で提案した生命起源シナリオの一部であるが,隕石衝突模擬実験によって,グリシン,カルボン酸類およびアミン類など多様な生物有機分子の生成を確かめ[3],シナリオを支持する結果を得たのであらためて本誌で解説する.

  生命起源に関する“何故?”には,生物学,物理学,化学など個々の専門分野の常識では答えられない謎がたくさんある.生命の発生や進化が,物理や化学の必然性のみならず二度と繰り返さない地球の“歴史の必然性”に基づいているからである.
   そもそも,“何故,生物には進化という現象があるのか?”との根本問題も,生物進化やDNAの研究からでは解を見出せないであろう.この問いは純粋に科学の問いであるにもかかわらず,青春時代の哲学問答を思い起こさせる.生命の起源や進化を考える人達のほとんどが,これまで謎とは認識せずに,生物は進化するものとア・プリオリに考えてきたからではなかろうか.読者の多くも多分そうであろう.
   アミノ酸や核酸塩基など生物を構成する基本的な有機分子が“何故,水溶性で且つ粘土鉱物親和性であるか?”も,同じである.問われてみれば化学の謎であり,しかし化学では解けない謎である.謎とは認識されずにア・プリオリに信じられてきた事実である.本論はその二つの“何故”を論ずる.どちらも生命の起源に迫る最も基本的な謎である. さらに生命の起源を考える際に,「生命は太古の海(水溶液中)で発生した」ことが前提とされているが,その科学的根拠を問われたら答えはないであろう.太古から現在まで海は海であり続け,水なしで生物は生きられないから,その海の中で発生したはずであると,ア・プリオリに信じられているに過ぎない.しかし,生物がそうであっても生命発生以前の分子進化も海の中でなければならないとする必然性はない.“有機分子のビッグ・バン”で出現した生物有機分子がさらに,高分子化して組織化する理由や経緯は,海も地殻も含んだ大きな地球表層の中で,“地球の総エントロピーの減少“の一環として説明できる.生命の発生は畢竟,地球の軽元素の組織化の一過程であるから,地球表層の地殻の進化と一体であったはずである.しかし,その“生命の地下発生仮説”の全容を述べるのは与えられた課題ではないので,拙著を参照されたい [1,2].同書は地球の進化に伴って“生命は地下で発生して海洋に適応放散した”と主張する.同説の核心の一つ,生物有機分子の高分子化はプレートテクトニクスに伴う地殻の流動に同期して進行したはずである,との考え方はずっと昔,“生命の地殻胚胎仮説“として本誌,Viva Origino,1993,で初めて提案した[4].

2. そもそも生物はなぜ進化するのか?生物にはなぜ進化という現象があるのか?

2.1. 生物の進化と熱力学第二法則の“矛盾”
   そもそも生物はなぜ進化するか,との問いは,遡れば,そもそもなぜ生命が発生したか,の問いに繋がり,生命の起源に関する最も基本的な問いである.
   高等学校の生物の教科書には,首がだんだんに伸びるキリンの絵や,種によって少しずつ形態の異なるダーウィンフィンチ(鶸)の絵と共に,ラ・マルク,ド・フリース,あるいはダーウィンの進化論が記述されている.用不用であれ,突然変異であれ,あるいは自然選択であれ,なぜ動植物の形態が現状のように進化したのか,あるいはなぜ多様な種が生じたのか,それぞれの説で一定の理解ができる.しかし,ではなぜ生物は進化するのか,なぜ生命が発生したか,についてはダーウィンのみならず既往のどの進化論でも答えられない.
     生物進化系統樹で生物界を概観すると,生物はバクテリアから真核生物そして原生代の多細胞生物群,さらには古生代の海洋生物群,中生代の爬虫類から新生代の哺乳動物群と,それぞれの地質年代でより大型でより高度な機能を備えた生物種に進化してきた.古生物学の教科書は,三葉虫やアンモナイトや恐竜や,あるいはずっと新しい馬や象など,それぞれ個々の種の進化を化石でたどると,時代と共に“より大型でより複雑な”形態に進化してきたことを教えている.生物種としての人類も同じである.その進化の傾向は“定向進化の法則”と言われて定説となっている.大型で複雑となり, 絶頂に達した種は絶滅して,小型でもより複雑で高度な機能を有する種に交代する.進化に見られる量質転化であり止揚である.
    バクテリアから人間まで,どのくらい大型化して複雑化したか?生物種の秩序化の程度を定量化的に記述することは難しいが,両者の有する機能や社会性から推定して,間違いなく“はるかに複雑な構造に”進化してきた.大型化については概算が可能である.バクテリアの径が10μm,人間の体重が100kgとすると,両者とも殆どは水であるから単純な割り算で概そ1×1017倍になったと言える.
   進化と共に,それだけのアミノ酸や核酸塩基あるいは水分子を体内に固定するようになったのである.それだけ多くのアミノ酸や核酸塩基分子が体内に固定された状態は,それらの分子が水溶液中に溶解して個々バラバラに自由に動きまわっていた状態に比べて,はるかに秩序化(規則化)された状態である.
    この事実は物理の大原則に反するように見える.自然現象は一般に,エントロピーが正に大きくなる方向,すなわちすべてが“デタラメ”(無秩序,不規則)になる方向に変化するはずだからである.「宇宙(反応系)のエネルギーの総和は一定不変であり(熱力学第一法則),宇宙のエントロピーは常に極大に向かって増加する(同第二法則)」ことは,覆ったことのない自然界を支配する大法則である.エントロピーの増加する方向に時間は進むから,自然現象は,元に戻せない不可逆現象である.
    コップの水に一滴のインクを落とせば,インクの色素分子は水全体に拡散して水は薄く着色する.均質に分散して色のムラがなくなればそれ以上は変化しない.色素分子が完全に無秩序に分布する状態(エントロピー最大)になったからである.この状態はその後熱の出入りがなければ未来永劫変わらない.湯や氷のような正負の熱の塊を水の中に入れても同じことが起こる.全体が等温(熱の均質=エントロピー最大)になって,元には戻れない.
    然るに,生物はより多量の分子を秩序化して複雑な構造に進化する!生物進化は熱力学第二法則に矛盾するのだろうか?

2.2. “生きる”ことの熱力学的意味,E. シュレーディンガーの解
    「進化」ではないが,「生きる」という生命現象自体が熱力学第二法則に矛盾すると指摘し,且つその解を見出したのは量子物理学者のE. シュレ−ディンガー(E. Schrödinger) である[5].生物は受精卵から成長して大きくなる間に,多量の有機分子を摂取して身体の一部として組織化するから,成長と共に分子の秩序化が進む.従って,熱力学第二法則に明らかに矛盾している.成長しなくても,身体という大きな組織を作っている分子が時間と共にばらばらに無秩序化しないだけでも同法則に矛盾する.死ねば分子はばらばらになってエントロピーは最大になるから,熱力学の法則に合うのは死んだ後だと言うことになる.成長は勿論,死なないで生きていること自体が物理法則に反している?
    シュレーディンガーはこの矛盾を「生物は負のエントロピーを食べて生きている」と考えて解決した.動物は他の生物(またはその一部)を摂取して,エントロピーの大きな排泄物に変えて排出し,その差額で生命体を維持する.植物は太陽の光エネルギー(高温で生成したエネルギーはエントロピーが小さい)を得て生育し,小さなエントロピーを葉や実に蓄えている.生物はエントロピーの小さなものを摂取して大きなものに変えて排出するから「負のエントロピーを食べる」とシュレーディンガーは表現した.エントロピーの代謝であり,成長は負のエントロピーの蓄積である.
    「生きる」あるいは「成長する」と言う生命現象が熱力学第二法則に矛盾しないことは斯様に理解できる.しかし,エントロピーの摂取と排出の差額(代謝)では,個体の生命維持は説明できても,分子から高分子,バクテリアからエディアカラ動物群へと,より大型でより高度な組織体(すなわちエントロピーの小さな状態)になる“進化”は説明できない.進化現象は,個々の種でも生物全体でも熱力学第二法則「宇宙(反応系)のエントロピーは常に極大に向かって増加する」の逆に進行するように見える.
    この矛盾は,キリンやヒワ(鶸)など個々の種の進化をゲノム解析しても解けないであろう.古細菌のゲノム解析,然りである.熱力学は“宇宙”すなわち“反応系”の総和が対象の法則だから,現象としての生物進化を丸ごと含む地球全体の物質と46億年の時間を考えなければならない.全地球の全歴史の時空を考えなければ,生物進化と熱力学第二法則との矛盾は解けない.そのためには,地球史が如何なるものであったか,正しい地球観が必要になる.シュレーディンガーやダーウィンなど天才達が“なぜ生物は進化するか”を問えなかったのは,彼らの時代の地球観では“45.5億年ダイナミックに変動し続ける地球“を思い付けなかったことによるであろう.ダイナミックに流動する地球の概念は20世紀の終わり頃になってようやく定着したからである.

2.3. 生命の発生と進化の必然性
    生命の発生や進化が熱力学第二法則に反するように見えるトリックは熱(エネルギー)の移動にある.同法則は宇宙(反応系)のエネルギーの総和が一定不変であることを前提にしている.にも拘わらず,生命の発生や進化を考える反応系である地球はその創成以来,常時,熱を系外へ放出してきた.降雨現象や地球内部の物質循環は全て,地球内部の熱を宇宙空間に放出する熱対流現象であることは前述したとおりである.
    45.5億年前,微惑星・隕石の衝突・集積・合体で創成された地球は,それらの凝集エネルギー(重力エネルギー)で一旦融解するほど高温になり,その後の地球史は熱を宇宙空間に放出し続ける冷却の歴史である.太陽の輻射熱や放射性元素の崩壊エネルギーが加わるとしても,基本的には地球創成時に蓄えられた膨大な凝集(重力)エネルギー(~1031ジュール)の一部が徐々に放出されて「固体地球は一方的に冷却している」と考えられている[6].
    熱を放出するに伴って地球のエントロピーは減少し,地球は徐々に秩序化しなければならない.創成時には,単純で均質な溶融球体であった地球は核・マントル・地殻のように層状に分化し,さらには海陸の分化も生じた.三次元の複雑化である.20世紀後半に解ってきた「ダイナミックに流動する地球」の諸現象はすべて,地球内部の熱を地表に運んで宇宙に放出するメカニズムの一部である.元素に注目すれば,熱の放出に伴って重い金属元素は核に,軽いアルミニウムや珪素は地殻に,そしてもっとずっと軽いH,C,N,Oは水や大気となって地表に濃集したと言えよう.
    熱の放出が続く限り,地球の構造はますます複雑になるはずである.地球の進化とは熱の放出に伴う地球の組織化・複雑化である.そうであるなら,地球の表層に濃集したH,C,N,Oの軽元素群が,有機分子となり高分子化して生物となって複雑化・組織化するのは,地球エントロピーの低下の一部として当然であろう.地球内部の重い元素が高温・高圧下で様々な結晶になって組織化することと,有機分子が生物となって進化することは同じ必然性に基づいていると理解できる.
   従って,有機分子の生成から生物の発生および進化は,地球を構成する軽元素の組織化・複雑化であり,進化させる圧力は地球全体の熱の放出とエントロピーの低下であると言える.生物は地球の一部として過去も現在も未来も進化せざるを得ない宿命にある[1, 2].

2.4. 鶏卵論争は代謝が先, 地球軽元素の組織化の視点から
    「生命の発生と進化は,地球総エントロピーの低下による地球軽元素の組織化であり高度化である」とする視点は,遺伝現象が何故出現したかおよび遺伝が先か代謝が先か,鶏卵論争の解も示唆するので,論旨を若干逸脱して本節で先に論ずる.
   地球軽元素,H,C,N,Oなどのエントロピーを下げる視点からすると,バラバラの有機分子を脱水重合で高分子化し,さらにそれらが組織化することでエントロピーは下げられる.しかし熱力学第二法則は,単なる組織体では多量の水の存在する海中で再び加水分解してばらばらになってしまうことを示唆している.かつてシュレーディンガーが指摘したとおりである(前述).従って,組織体が存在し続けるためにエントロピーを低く保つための,エントロピー代謝の機構が先ず獲得されたはずである.遺伝機構はなくてもエントロピーの代謝ができる間,組織体は存続する.命に限りがある組織体であるので“生命体”である.遺伝による複製機能がないので“種”は存在せず,組織体を構成する高分子群は,大きさも,代謝機構も様々,雑多であったはずである.遺伝機構の獲得以前にはそんな“種を構成しないランダムな生命体の時代”があったはずであると推定される.

   遺伝機構は巧に自己複製する機構であるから,地球のエントロピーが減少して,さらに“効率よく”軽元素群のエントロピーを下げるための機構として自然選択されたと考えられる.何時どんな地球史的イベントがあって,その環境でどんな遺伝機構が逐次自然選択されたかは,現時点では特定できない.バクテリアに見られる連続共生や細胞融合のメカニズムは,複数の“種のない生命体”が融合する過程で,優れたRNA遺伝機構が獲得され,“究極の祖先”の“種”も成立したことを示唆している.
   しかしこの逆順,RNAのような遺伝機構を担う巨大分子が先にあって,後に代謝機構を獲得したとすると,巨大分子がばらばらにならなくて済んだ理由は説明できず,またなぜ代謝機構を持たねばならなかったかの理由も説明できない.高分子の組織体が代謝機構を先に具備して,後に遺伝機構を備えたと考える理由である.
    鶏と卵の関係を解いたとして,若干の触媒能のあるRNAが生命の起源であるとする“RNAワールド説”が一般には広く信じられている.しかし,核酸塩基や糖が水中で自然に脱水重合してRNAに組織化するのは難しく,仮に一定規模の組織体ができたとしても,エントロピー代謝がない限り結局は,熱力学第二法則で加水分解されてバラバラになるであろう.RNAが始めにあったとするRNAワールド説では,生物の有する精緻で複雑な複製機構が何故成立したかの必然性を説明することができない.むしろ,“こんな精緻な自己複製機構は神によってしか創出し得ない”とするIntelligent design派の根拠に利用されかねない.
   遺伝機構は積極的に生物種を“進化”させる機構ではなく,同種を多量に複製する効率のいい増殖機構である.生命体を多量に複製することで効率よく地球軽元素のエントロピーを下げたのである.しかし,複製情報の伝達に誤りが生ずることと地球表層の状況変化に対応した自然選択が重なることによって,より複雑でより大型な生命体(よりエントロピーが小さい)を創出する進化機構にもなり得たわけである.地球の総エントロピーの減少に対応した地球軽元素の組織化が生命の発生や進化の本質であると理解すると,既知の進化論では説明できなかった鶏卵論争も斯様に理解できる.






図1.地球の放熱による組織化

3. 有機分子の起源と生物有機分子のサバイバル

3.1. 40億~38億年前頃の地球
    45.5億年前頃,微惑星・隕石の凝集によって生成した地球は衝撃エネルギーによって表層から融解してマグマオーシャンとなり[7, 8],その後冷却して43億年前頃には海があったであろうと考えられている[9].微惑星は直径1~10km程度の球体で,太陽系のガス中に浮遊する宇宙塵(直径~0.1μm)が相互の引力で凝集したものである[10].融解の過程でマグマから放出されたN2,CO2およびH2Oが大気を構成していたものと考えられている[11, 12].有機分子はあったとしても,マグマオーシャンの高温(>1,200℃)で分解・消失し,H2は宇宙に逃散するので,地球表層は結局,弱酸化的な無機界にリセットされたはずである.
    月は地球の創成期に大型の微惑星が衝突することによって生成されたと考えられているが,その後の微惑星・隕石衝突の様子が,衝突によって飛散した液滴状の粒子(テクタイト)やクレーターとして残されている.米国のアポロ計画で持ち帰られたテクタイトの年代決定やクレーターの分布の解析から,衝突の年代,頻度,衝突エネルギーなどが推定される.それによると,隕石衝突は45,5億年前頃から連続的に減少して43~40億年前頃には一旦,現在の10倍ほどに低減した.しかし,40億年前頃から再び現在の1000倍ほどに激しくなって38億年前頃まで続き,35億年前頃になってほぼ現在と同じ程度になったものと推定されている[13, 14, 15].
   地球史上でこの時にしかなかった40~38億年前の激しい隕石衝突は“後期重爆撃”(LHB)と呼ばれているが,日本の衛星探査機「かぐや」の詳細な月面クレーターのハイビジョン映像の解析でも追認されている.この後期重爆撃は太陽系の惑星軌道の揺らぎによって生じたもので,ほとんどは小惑星帯を起源とする小惑星(アステロイド)やその破片である隕石であると推定されている[16, 17].この後期重爆撃によって地球は1~2×1023g増量し,地球全体に平均して,200 ton/m2 積もったことに相当すると言われている[18, 19].
    当時の地球の構造は単純で大陸は未だ発達していなかったと推定されるので [20],地球の水の総量が当時と現在で大差がないとすると,現在の平均海深3,800mより若干浅い海がほぼ地球全体を覆っていたと推定される.従って,隕石のほとんどは海洋,すなわち“水”に衝突した.衝突エネルギーは衝突体の速度に依存するが,40~38億年前の後期重爆撃のエネルギーは月や地球に残されたクレーターの規模から推定して,最大で1025~26ジュールと見積もられている[21].40~38億年前は斯様な隕石海洋爆撃が日常的にあった時代である.

3.2. 有機分子の起源,ミラーの放電説に替わる“有機分子ビッグバン説”
   オパーリンの生命起源論に触発されて,S. L. ミラーがH2,NH3,CH,H2O混合気体の放電で,アミノ酸などの生物有機分子が容易に生成することを証明したのは1953年である[22, 23, 24].生命の起源に迫る科学的研究の嚆矢となったこの論文のタイトル“A production of amino acids under possible primitive Earth condition”は,当時の地球形成モデルにもとづいて原始大気の組成を模擬した実験であることを示している[25].その後はむしろ化学的な観点から放電に替わる様々なエネルギー源を用いた類似の実験が1970年代まで繰り返され,H2,NH3,CHなどを含む“還元的”な混合気体中であれば,X線,電子線,紫外線,衝撃波など照射エネルギー源に依らず容易にアミノ酸など生物有機分子が生成されることが明らかとなった[26].
   しかし同時に,CO2, N2など弱酸化的および非還元的気体中では,どんなエネルギー源を用いても生物有機分子が生成し得ないことも明らかになっていた.S. L. ミラーらの放電による有機分子起源説は,現在の中学・高校の教科書にも記述され,時には専門家にも引用されて未だに広く信じられている.しかし,1970年代から急速に進歩した地球科学は,原始大気がミラー等の前提とした還元型ではなく,N2,CO2,H2Oを主とする“弱酸化的”な大気であることを明らかにした.従って20世紀末には,生命発生に先立つ有機分子の起源の合理的な説明ができなくなって,また謎に逆戻りしていた.

   新しい原始地球の描像によれば,生命が発生したであろうと推定される時期は早くても35~38億年前であり,ちょうど後期重爆撃(40~38億年前)の収束した時期と一致している.その頃はすでに海が広く地球を覆い,プレートテクトニクスも開始していた[27].生命の起源と進化が地球冷却史の必然的結果であるとの視点に立つと,生命の発生に先立つ多量の有機分子の起源は,この地球史上の特別なイベント“大量の隕石の海洋爆撃”によるのではないかと予測される.そこで以下の考察から,S. L. ミラーの放電説に替わる“有機分子ビッグ・バン説”が導かれた[1, 2].

   隕石が海洋(水)に衝突する時,高速であれば水も固体のように振舞うことはよく知られている.例えば,玄武岩質の隕石が10 km/s (地球引力圏脱出速度は11.2 km/s)で水面に垂直に衝突すれば,水の固さは玄武岩の固さの1/3 程度である.従って,隕石は海面衝突によっても蒸発,溶融,破砕し,大量の水は超臨界水および超高温の気体となって吹き上がって急冷される.衝撃の強さは隕石の衝突速度に依存し,隕石が斜めに衝突すれば強さは入射角の鉛直成分に比例する.隕石が衝突して隕石や岩石が“蒸発”した地質学的証拠は未だ見つかっていないが,溶融した痕跡は前述の月のテクタイトあるいはアフリカやオーストラリアの35億年以前の地層に見られ[28, 29],恐竜絶滅で知られたK−T境界の隕石衝突のテクタイトはハイチなどで発見されている[30].
   一方,40~38億年前の後期重爆撃で海洋に衝突した隕石の起源は小惑星帯で,現在の地球で見つかる隕石のほとんども同じ起源であることが知られている[16,17].隕石の統計によれば,それらの86%は“普通コンドライト”と呼ばれる種類である[31].普通コンドライトはおよそ10~20%の金属鉄と70~80%の橄欖石を含み[32, 33],その中には,数%~0.1%程度の無機炭素(石墨または非晶質)も含まれている.この金属鉄と無機炭素を含む普通コンドライトが海洋に衝突して蒸発したのであれば,大気のN2および海洋の水と衝撃下および衝撃後の激しい化学反応で,アンモニアやアミノ酸など生命発生に必要な有機分子も生成した可能性があると考えられる.
   すなわち,大量の金属鉄は水を還元し,水素は大気の窒素と反応してアンモニアを生成したであろうし(Haber-Bosch 法),無機炭素と水の反応(炭素の水性ガス反応)で生じた一酸化炭素に水素が加わればさまざまな炭化水素が生成する(Fischer-Tropsch 合成).衝撃下および衝撃後の非平衡な化学反応ではさらに多様な有機化合物の生成が考えられ,超高温から急激に温度の下がる衝撃後蒸気雲の中で多様な有機分子が生成したものと推定される.後期重爆撃で地球にもたらされた隕石の総量が200ton/m2で全地球を覆ったと推定されているので[18,19],生成される有機分子の総量も極めて多量であったと推定される.

  





図2.隕石海洋爆撃(想定図)

これらの考察から,金属鉄と固体炭素を含む隕石が海洋に衝突した衝撃下と衝撃後蒸気雲内に限って“局所的な”還元状態が形成され,その超高圧からの減圧および超高温からの急冷の非平衡な条件で多種・多量の有機分子が生成されるものと推定される.生命発生の素である多量の有機分子が,原始地球の後期重爆撃の時代にしかあり得ない地球史上のイベントによって無機界で準備されたと推定されるので“有機分子ビッグ・バン説”と命名した[1, 2].

3.3. “有機分子ビッグ・バン説”の隕石海洋衝突模擬実験による検証
   隕石の海洋衝突を再現することは不可能であるが,天然に比べて実験室の衝突体の大きさや衝突速度が実際より小さいこと,あるいは衝突後の空間が天然では無限の開放系であるが,実験室では閉じた空間であることなど,違いを考慮して解釈すれば,室内の衝撃実験によって有機分子ビッグ・バン説の妥当性を検証することはできる.
   鉄を含む隕石が海洋に衝突したことを模擬する実験で最初に試みたのは,アンモニアの生成である[34].弱酸化的な原始大気には存在し得ないアンモニアはアミノ酸の生成に不可欠な前駆体であり,生物有機分子生成の鍵物質だからである.実験に用いた一段式火薬銃,飛翔体,被衝突体(試料容器)を模式的に図3に示す.火薬によって飛翔体を飛ばして試料容器に衝突させ,発生する衝撃波で試料容器内に超高圧高温を発生させる機構である.衝撃後,試料容器を回収し,汚れた表面を旋盤で削除した後,溶剤と純水で表面を清浄化し,液体窒素で冷却して凍結中に穿孔して水に浸し,水に溶解したアンモニアをイオンクロマトグラフで検出した.
   試料容器には隕石(普通コンドライト)に含まれる鉄と大気の主成分N(窒素源としてCu3N粉末を用いた)および海洋のH2Oを封入した.容器の破裂を防ぐために,飛翔体の衝突速度は<0.9 km/sec,H2Oは<130 μgに制限される.実験の結果,封入した鉄や水の量に比例したアンモニアの生成が確認され,最大では容器内のNの8%が還元されてアンモニアが生成した.X線回折でFeOの生成が確認されたので,N2+3H2O+3Fe = 2NH3+3FeOの反応によるものと解釈された.
   実際の隕石ははるかに大きく,また衝突速度も1桁ほど大きいと推定されるので,衝突後の超高圧持続時間も長く,アンモニアの収率はもっとずっと大きいであろう.例えば,直径50mほどの微惑星が衝突し,含まれていた金属鉄の10%が反応したとすると,一挙に4000t以上のアンモニアが生成したと推定された[34].
   隕石海洋衝突によってアンモニアが多量に容易に生成することは,少なくとも一定期間隕石が衝突した付近の海洋にはアンモニアが溶解していたことを示唆している.原始大気が弱酸化的で気体のアンモニアは存在できないとしても,海中にはアミノ酸の前駆体となるアンモニアが多量に溶解していて,アミノ酸生成の原資となったはずである.海中にCO2が溶解していたことを考えると,両者がイオン化して長期間安定に存在し得たと推定される.

   上記の実験に固体炭素を加えることで,“有機分子ビッグ・バン説”の可能性を直接証明したのは,著者らの研究グループの実験技術と分析技術が向上した最近である [3].試料容器には隕石成分の鉄,ニッケルおよび固体炭素(非晶質13C),海洋成分の水および大気の主成分である気体の窒素を充填した.それぞれの量は,衝撃によって生成した有機分子の収量と共に別記する(表1).炭素源に,天然の存在比1%の核種13Cを用いたのは,質量分析によって実験生成有機分子と混入可能な天然有機分子とを明瞭に区別できるからである.




表1.隕石海洋衝突模擬実験の出発試料と検出された生物有機分子[3]




   衝撃後,回収した試料容器はアンモニアの場合と同様に,容器の表面を削除した後清浄化し,液体窒素で冷却中に穿孔して超純水中に水溶性生成物を抽出した.抽出物を三分割してそれぞれ異なった前処理をして,カルボン酸,アミンおよびアミノ酸分析に供した.前処理の詳細はここでは省くが,分子量の小さい揮発性分子を含むカルボン酸やアミンはそれぞれ,一旦,カルボン酸ナトリウム塩あるいはアミン塩酸塩として濃縮した.カルボン酸はガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS, 6890; Hewlett-Packard Co.)で分析し,アミノ酸は不揮発性であるので減圧乾燥した後,アミンと共にAccQ-Fluor Reagent Kit (Waters Co.)を用いて誘導体化処理をして,液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS, 2695 separation module; Waters Corp. and Quattro micro API, Waters Co.)で分析した[3, 35].
   検出された炭素鎖の異なる6種のカルボン酸(酢酸,プロピオン酸,2−メチルプロピオン酸,ブタン酸,ペンタン酸),4種のアミン(メチルアミン,エチルアミン,プロピルアミン,ブチルアミン)およびグリシンの収量を表1に示す.それぞれの炭素は13Cであって,衝撃実験により生成したことは明瞭である.カルボン酸もアミンも,炭素鎖の長さに逆比例して収量が指数関数的に減少し,生成反応の機構を示唆している.カルボン酸のうちで最も分子量の小さいギ酸が検出されていないのは,揮発性が高いために分析前処理の濃縮過程で蒸発したものと解釈できる.
   海洋にアンモニアが溶解していたことを想定して出発物質にアンモニア水溶液を加えた実験(SA004,表1)では,グリシンが検出されると共に,アミンおよびカルボン酸の収量も明らかに多い.それぞれの反応機構の詳細は検討中であるが,頻繁に隕石が衝突した後期重爆撃の時代に,前の隕石衝突で生成されたアンモニアが海洋に溶解している可能性は実験的にも [34] 地質学的にも示唆されているので[36],そんな海洋への隕石爆撃でより多量のアミノ酸や生物有機分子が生成したものと推定される.
   衝撃回収実験の試料空間は破裂を防ぐために小さく限定され(図3),封入できる出発試料も限定されるので,上記三種の分子種だけが分析対象となっているが,他の分子種の生成も充分推定される.その後の予備実験では,メタン,プロパン,ブタン,ヘキサン,ベンゼンなど揮発性の有機分子が多量に検出されている(未発表).本実験で検出した有機分子の総量と出発物質の13Cの重量比は5.1 × 10-5 であるから,後期重爆撃の1億年間で集積したと推定される隕石の総量2 × 1023g [18],隕石中の普通コンドライトの比率86%[31],および普通コンドライト中の炭素の比率0.1%と掛け合わせると,後期重爆撃の1億年間に少なくとも1 × 1010トンの有機分子が生成したと推定される.この値は2004年の全世界産油量,3.6 × 109 トンと比べると,多さが認識できるであろう.その上,この計算では分析対象としたカルボン酸,アミンおよびグリシンの生成量だけが,炭素の有機分子変換量として用いられているので,実際はさらずっと多く,また実際の隕石衝突はスケールも衝突速度も大きく加圧継続時間も桁違いに長いので,実際の生成量はこの値より遥かに,桁違いに大きいものと推定される.“有機分子のビッグ・バン”である.






図3.隕石海洋爆撃を模擬する一段式火薬銃の構成

3.4. 生物有機分子のサバイバル
   隕石の海洋衝突により隕石,大気,海水は一気に蒸発・融解して急速に膨張し,衝突後蒸気雲となって上昇する.蒸気雲内で圧力や温度が急激に低減する間に“有機分子のビッグ・バン”によって多量の有機分子群が生成すると共に隕石に含まれる無機成分は超微粒子として再析出する[37].溶融体の飛沫や単なる破砕片も加わる.乱流の中では雷放電も生じ,金属鉄を含む隕石の海洋衝突では蒸気雲内が還元的であるからミラーの実験が示すような生物有機分子の生成も加わる可能性もある.生成した有機分子は多量の水蒸気と共に超微粒子など無機粒子を核として凝集し,“黒い雨”となって海洋に回帰する.隕石の規模によって蒸発・融解成分は異なり,また上空での拡散・滞留の時間も異なるが,海洋衝突では多量の水蒸気があるので氷晶の発達は激しく,生成した有機分子のほとんどは“黒い雨”となって海洋に回帰したと推定される.
    海洋に回収された有機分子はそれぞれの性質によって異なった挙動をとる.炭化水素のような疎水性分子は相互に凝集して海面に浮上し油膜となる.一方,アミノ酸などの親水性分子はそのまま海水中に溶解または分散する.この時点で疎水性と親水性有機分子は明瞭に分化する.アミノ酸,核酸塩基,糖など基本的な生物有機分子はみな親水性であるので海中にとどまるが,油膜となって海面に浮上した疎水性有機分子は大気と強い紫外線に接する.隕石海洋爆撃の動乱が収まった後の大気は再び弱酸化的大気に戻っているので,浮上した疎水性有機分子は除々に酸化されてCO2とH2Oに分解される.紫外線の光化学反応によっても容易に分解されたであろう.従って,有機分子ビッグ・バンで地球上に現れた有機分子群のうち,疎水性有機分子は淘汰され,水溶性有機分子だけが海洋中に残ったはずである.水溶性の生物有機分子は,生成して間もないこの時点ですでに自然選択されサバイバルしたと考えられる.






図4.海洋における生物有機分子の自然選択

4. おわりに

  海中には,大気成分のみならず隕石の無機成分も懸濁している.微細な超微粒子,テクタイト,破砕片,あるいは橄欖石が加水分解された蛇紋石等は“黒い雨”の氷晶核となって海中に回帰し,その後コロイドとなって長期間懸濁するか,または除々にストークス則に従って沈澱する.粘土鉱物に類する層状珪酸塩の蛇紋石はコロイドとなって長期間海水に懸濁したであろう.微細な橄欖石の超微粒子,テクタイトおよび蛇紋石等は水と反応して風化し易いので,少なくとも一部は,緑泥石あるいはスメクタイトなど他の粘土鉱物に変化して懸濁したと考えられる.大陸が未発達であった40~38億年前頃の堆積物起源の変成岩に,既にアンモニアを含んだ多量の粘土鉱物の存在が示唆されているので[36],隕石起源の粘土鉱物が当時の海洋にコロイドとなって多量に懸濁していたと推定される.
   アミノ酸,核酸塩基,糖など生物有機分子が粘土鉱物と親和的であることはよく知られている[38,39,40].それらは粘土鉱物に容易に吸着し,さらに相互に凝集して結局は海底に沈殿する.J. D. バナールは著書「生命の起源―その物理的基礎―」の中で,海水に希薄に分散している有機分子が反応に必要な濃度に濃縮する機構として,有機分子の粘土鉱物への吸着および沈殿を挙げている[41,42].有機分子ビッグ・バンで生成し,海水中に溶解した生物有機分子が重合して高分子化する進化の過程として,バナールの指摘は当を得ている.しかし本論で指摘したのは,もう一つの側面,すなわち生物有機分子が粘土粒子への吸着・沈殿することで,弱酸化的な大気や紫外線の影響のあり得る海中から海底に退避して完全にサバイバルすることである.

   有機分子の起源と,なぜ生物は水溶性で粘土鉱物親和的な分子で構成されているか,は斯様に理解できる.有機化合物の生成から水溶性有機分子の自然選択および海底への退避は,地球における物質移動の自然で一連の過程である.このシナリオの続き,粘土粒子と共に海底に沈殿して堆積した生物有機分子が,その後の圧密によって脱水重合して高分子し,さらにプレートテクトニクスによって移動する間に組織化して生命に進化するであろうことは別に論じた[1,2,4].生命の発生に至る生物有機分子の進化は,地球史と共に連続して条件の変わる環境を想定した物理および化学反応の研究の中で明らかにされるものと考える.
   本論の主旨を敢えて一言で表現するなら,「生命の発生と進化は地球の冷却に伴う地球軽元素の組織化とその高度化であり,生命は地球の一部の存在様式である」と言えよう.

謝辞

本論の後半に記述した隕石海洋衝突模擬実験は,古川善博(東北大),関根利守(NIMS),掛川武(東北大),大庭雅寛(東北大),中澤暁(JAXA)との共同で成功した.特に、関根の衝突実験技術および古川の試料処理および分析技術に拠るところが大きい.本論の投稿を勧めて頂いた藤井紀子本会幹事と共に,記して謝意を表する.科学研究費補助金19654083および21340162による.

引用文献

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