RECENT STUDIES ON THE ORIGIN OF LIFE

Tadashi Oishi
Narasaho College
Rokuyaon-cho, Nara, Nara 630-8566, Japan.
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(Received July 31, 2009; Accepted August 11, 2009)


最近の生命起原研究

大石 正
奈良佐保短期大学
〒630-8566奈良市鹿野園町806

Abstract

     (Abstracts) The major hypotheses on the origin of life are (1) RNA world hypothesis and (2) Protein world hypothesis. Many questions on the origin of life remain to be solved as OQOL2009 (Open Questions on the Origins of Life 2009) proposed. International Workshop on OQOL2009 was held in Spain, in May, to answer the questions. Although I could not attend the meeting, I tried to answer the questions raised by OQOL2009.

(Keywords)

OQOL2009, origin of life, GADV protein, RNA world, genetic code

   生命がどのようにしてこの地球に生まれ出たかに関する現時点で主流となっている考えは,RNAが遺伝的機能と触媒機能の両者を併せ持つことのできる唯一の生体高分子であるとの考えに基づくRNAワールド仮説である [1,2].しかし,このRNAワールド仮説には多くの疑問点があることも良く知られている事実である[3].
   一方,池原ら[3,4]は,遺伝子や遺伝暗号がどのように生み出されるのかについてのGC-NSF(a)仮説[5]や遺伝暗号の起原に関するGNC-SNS原始遺伝暗号仮説[6]を考察する過程で思いついた生命の起原に関するGADV仮説を提唱している.
   また,近年,火星探査など宇宙科学的な研究の進歩や彗星や隕石中の化学的分析技術が進歩するにしたがって,これまでにも彗星や隕石を通じて生命を生み出すもととなった水やアミノ酸が宇宙から地球に持ち込まれたという多くの事実が確認されている.そのようなこともあって,生命は地球で生まれたのではなく,宇宙で生まれ,この地球に到達した後,地球で繁栄したのではないかとの生命の起原に関する宇宙起原説も提唱されているが,この議論も真の生命の起原に答えを与えるものではない.
   これらの生命の起原に関する14の質問がInternational Workshop “Open Questions on the Origins of Life 2008” において提示され,今年の5月にスペインのバスク地方で開催された2009年のワークショップにおいて,これらのうちから8問について議論された.そこで,ここでは,それらの質問を紹介するとともに,コメントを試みた.

質問 1: 生命の起原はどの程度決定論的かあるいは偶然にもとづいているか?

前提: 生命の起原は,二つの対立する基本的な枠組,決定論と偶然論によって考察されている.一般に,これら二つの原理は同時に働いている,なぜなら,偶然による選択は自然の法則に従わねばならない,言い換えれば,偶然は熱力学的現象から生じる.しかしながら,我々が生命の起原は決定的決定論(完全決定論)に従うかどうか,あるいは,それは偶然の所産によるかどうかという基本的問いかけをするとき,二つの見地は再びお互いに極端に対立する.もっと正確に言えば,決定論的見地(クリスチャン・ド・デユーブにより最も明確に示されている)によれば,生命の起原は非常に高い可能性をもった事象である:実際,最初の境界条件(いわゆる“必然の絶対的真理”)から必然的に生じたに違いない.対立する見地(例えば,ジャック・モノーによって支持されている)によれば,生命の起原は,それぞれは多分決定論的ないくつかの独立の要因によって引き起こされ,これらの要因が同時にまた予想できない相互作用をし,生命の起原に至る事象を引き起こしたと考えられている.

質問:合理的かつ科学的基礎のもとに,これらの二つの極端な見地のどちらかを選択することは不可能であること,言い換えると,それは個々の科学者にとって哲学的あるいは宗教的信念に属すること,だと思いますか?もし,あなたが同意しないのなら,どちらかの考え方に沿った科学的議論を提供できますか?

答:この質問に対する答えは,”No, I do not agree”です.哲学的,宗教的信念に属することではなく,合理的,科学的に解決できることです.しかし,これら二つの選択をすることは意味がなく,生命の起原には,偶然的要素と必然的要素の両方が関与していると考えるべきであるからです.従って,どちらかの考え方を支持するということではなく,生命の起原および遺伝暗号の起原についての唯一検証可能な説である,池原の「GADVタンパク質ワールド仮説」を検証することが急務です.


質問2:生命は創発的特質(Emergent property)か?

前提:創発(Emergence)は多くの複雑な側面をもつ概念である.一般的見地からすると,創発的特質は部分や成分が集まってより高次のヒエラルキーを形成するときに生じる新しい特質,すなわち部分や成分には存在しない特質という意味で新しいものである.細胞の単一の成分は“それ自体”生きていないので,現代の科学者のほとんどが,細胞生命は創発的特質であると考えている.

質問: あなたは次のことを言うのに今や充分なデータがあると思いますか.すなわち,生命は非生物的部分の相互作用と自己組織化により生じた,まさに創発的特質である.あるいは,生命を創発的特質として記述するのに一種の“生気説”的においをまだ感じますか.

答え:はい,生命は,創発的特質であると言えると思います.池原のGADV仮説にもとづけば,[GADV]-アミノ酸の合成から,[GADV]-タンパク質の形成,遺伝暗号とそれに引き続く遺伝子の形成というように,生命の誕生に向けての過程を説明できる可能性があるという意味で,“生気説”的においを払拭するに十分なデータがあると言えます.


質問3:生命の起原は従属栄養的(Heterotrophic)筋書であったか,あるいは独立栄養的(Autotrophic)なものであったか?

前提:今日の生命の起原に関する重要な疑問の一つは,従属栄養的か独立栄養的かの二分論である.(極端)な従属栄養的筋書においては,前生物的世界において高エネルギー過程(原始大気におけるミラー型のように,あるいは地球外から地球に衝突によって運ばれてきたように)で集積したと仮定されている有機物質が,生命の起原に至る決定的な自己組織化の過程を生じたと考えられている.全く反対に,(極端な)独立栄養的筋書においては,この種の有機物は関係なく,生命を構築した化学過程の基質や中間生成物は自己組織化された構造(例えば,強い無機的還元剤と結合したC-1あるいはC-2有機体の自由エネルギーから)の中で合成過程を通して形成されると説明されている.

質問:このどちらかの筋書を支持する強力な化学的議論は存在するかだろうか.
  そして,この二分論を解決するのにどのような実験を提案することができますか?

答:私は,従属栄養説を支持します.実験は,ミラータイプの実験によって生成するアミノ酸等の物質からGADVタンパク質を作成することや,その酵素活性を調べることも可能となります.また,GADVタンパク質とtRNAの形成実験により遺伝暗号の形成過程なども検証できます.


質問4:触媒反応サイクルの起原は,何であるか?

前提:前生物的シナリオにおいて,スタンレイ・ミラーの有名な実験によって仮定されたように,初期条件が与えられれば,前生物的反応は熱力学的法則により最も安定な化合物に収束していく.従って,熱力学的制御の中で,前生物的化学進化はそれほど進まないであろう.実際,生命の起原の疑問は,酵素様のものにより制御された触媒反応(最終的に,遺伝的に制御された触媒反応)に至る.そして,化学的に平衡となった反応系ではなく,一連の代謝サイクルを形成する.一つの考え方は,いわゆる熱水系の無機的チューブの内面に結合した有機物質のフィルムが,代謝的細胞生命に導く異なる層の間の相互作用のネットワークを開始したという考えである.

質問: 前生物的シナリオにおいて,連続的な触媒反応が始まったかをどのように考えるか?この決定的な点について,あなたは単なる信念ではない事実あるいは科学的議論を提供できますか?

答:はい,できます.GADVタンパク質ワールド説で言われている[GADV]-タンパク質の触媒活性を調べることによって,この決定的な点についての科学的根拠を与えることができると思われます.


質問5:「RNAワールド」は,妥当な仮説と言えるだろうか?

前提:前生物的RNAを基礎とした生命の起原は,未だに優先的シナリオである.しかしながら,この仮説では,RNAが前生物的に形成されたと仮定している.一方,疑問は,“何がRNAを作ったか”がまだ答えられていないことである. 実際,今までのところ,非常に多くの卓越した化学者による研究があるにもかかわらず,明白な前生物的な核酸の合成は確認されていない.そして,もしそれが見つかったとしても,我々は,その単位をお互い3’-5’の形に結合する前生物的方法を見つけなればならない.そして,最後に,これがもし分かったとしても,例えば,10-12 Mの濃度の溶液(すなわち,1リットル当たり約1013コピー,1マイクロリットル当たり約107コピーを意味する)にするために,多くの同じコピーを合成することができる特異的高分子配列を見つけねばならない.前生物的RNA合成は,未だに,科学的見地からキメラ(怪物)と結論せざるを得ない.

問題:あなたは,これらのむしろ暗い見方を支持しますか.前生物的RNAワールドに対するこれらの疑問を解く実験あるいは議論を提案できますか.

答: RNAワールド説には,前提の中で述べられているようにヌクレオチドの合成やRNAの合成がほとんど不可能なことなど,根本的な欠陥があります.従って,他の仮説,すなわち,現在唯一検証可能な池原のGADVタンパク質仮説を実験により検証することが急務です.


質問6:原細胞世界と細胞の間のギャップを埋めることができますか.

前提:地球上の最も簡単な細胞は少なくとも500-600もっと一般的には数千の遺伝子をもっている.これは,初期の細胞が多分そんなに複雑ではあり得ないという見方から,この高い複雑性は細胞生命に本当に必要なのだろうかという疑問が生じる.しかしながら,今までのところ,化学的に細胞を合成することは成功していない.そして現存の遺伝子や酵素をもったDNA/タンパク質“極小細胞”は,まだ数百の遺伝子を必要としている.言い換えると,我々は,まだ初期の“極小細胞(現代の細胞のもととなる原始的構造)”を解明できていない.

質問:あなたは,生きている細胞が数十の独立した特異的高分子が必要で,それにもかかわらず,この複雑性は前生物的時期にはあり得なかったという謎を解く道がわかりますか.そして/あるいは,最も簡単な初期の細胞の構造を想像できますか.

答:はい.GADVタンパク質仮説は,[GADV]-アミノ酸や[GADV]-タンパク質の合成,遺伝暗号や遺伝子の形成などの検証の過程で明らかにすることが可能です.


質問7:生命は統一体なのか連合体なのか.

前提:多くの科学は,生命を形式的(暗黙的に)に統一的概念としてとらえている,そして,非常にしばしば,生命の起原を根本的に一種の統一的事象,地球上における非生命から生命への移行ととらえる. 別の概念の前提は,生命は結合しているけれども区別できるサブシステム(それぞれはそれ自身のダイナミクスと安定性を有する)の集合であるとする.その場合,生命の起原は,一連の独立した移行期を含んでいる.例えば,自己複製の発現と小胞の形成,代謝サイクルとは異なるタンパク質の生合成,前生物的化学とは異なる還元力の起原,などを別々な事象として考える.生命における,偶然性の程度と“単純化できない複雑性”の程度は,いかにサブシステムが緊密にあるいはゆるやかに結合しているかによると考える.

質問:あなたは生命の起原に関するこの連合体説に賛同するか.そして,もしイエスなら,生命の現代的機能とその起原の両方を理解するのに,相互依存に対して独立サブシステムの概念を適用するための適当な方法は何であると思うか.今日の生命の構成と安定性についての異なる理解は,生命の起原についてのより良い研究に導くであろう.もし,生命が全く統一的概念でなく,偶然に結合した過程であるならば,それを分解すれば,矛盾と混乱に導くことなく,生命の起原の性質と過程を定義するのではないだろうか.

答:賛同しません.なぜならば,最初の生命は単一の複合体から生まれたと思われるから.


質問8:生命の起原そのものをどのように定義するか.

前提:生命を普遍的に定義するのは,非常に難しく,ほとんど不可能なことである,しかし,生命の起原という概念がむしろ混乱のもとであるようにみえる.ある科学者たちは,生命の起原について,熱水孔か,黄鉄鉱上の反応,あるいはミラー型の過程を通して得られる,低分子化合物のレベルで議論する.しかしながら,この世のすべての低分子化合物をもったとしても,生命をつくることはできない,なぜなら,生命は酵素,DNA,RNAなどの一連の特異的高分子のレベルでのみ生じるからである.

質問:生命の起原という用語について厳密に定義すべきということに賛同しますか.例えば,この用語を低分子化合物のレベル(前生物的化学や還元力の起原がある場)で用いるべきでないし,特異的高分子とそれらの相互作用の生合成のレベルに制限すべきだろうか.

答:はい,賛同します.低分子化合物の形成から高分子化合物の合成,そして,低分子化合物と高分子化合物との特異的相互作用,遺伝情報の形成という順で行われた生合成の中で,生命が生まれたというレベルに制限すべきです.



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