Upon Planning of Simposium “about Research on the Origin of Life”

Kenji Ikehara1,2 1Narasaho College, 2International Institute for Advanced Studies


シンポジウム「生命起原研究を巡って」を企画して

池原 健二
奈良佐保短期大学・国際高等研究所

  「生命の起原」は古くから多くの人が大きな関心を寄せてきたものの一つである.また,遥かに遠い昔に起こった事象を実験室内で再現することは事実上不可能であり,生命の起原を研究することに対して問題視する科学者も多い.その中で,生命の起原を説明するための有力な考えとしては,触媒能を持ったRNA(リボザイム)の発見をきっかけとして提案されたRNAワールド仮説がある.しかし,このRNAワールド仮説にしても,ヌクレオチドやRNAの化学進化的合成が困難であるなどいくつもの問題点を抱えた考えに留まっている.そのようなこともあって,未だにどのような過程を経て生命が生み出されたのかについては多くの議論のあるところである.
  一方,この生命の起原を探ることを一つの中心テーマとしているのが「生命の起原および進化学会」である.しかし,上でも書いたように生命の起原については,この学会の中でもまだ定説と言えるものはなく,それぞれがそれぞれの思いの中で思索を進め,この難問に当っているというのが現状であろう.また,世界的に見ても生命の起原についてはまだまだ模索段階であることは,今年(平成21年)の5月にスペインで開催されたOQOL2009(Open Questions on the Origins of Life)の中で提案されている質問とそれに対する議論を見ても明らかである.
  そのような状況の中で,「生命の起原および進化学会」という名称を持つ本学会こそが生命の起原に関する問題を真正面からまともに議論するべき最も適した場所だと言えよう.しかし残念ながら,これまでは生命の起原という本学会が取り組むべき中心課題にまともに立ち向かって来なかったように見受けられる.そこで,平成21年の3月に藤井紀子先生のお世話により京都大学の原子炉実験所で開かれた「生命の起原および進化学会大会」の一つのシンポジウムとして,奈良佐保短期大学の大石正学長と私(池原)とが共同で,「生命起原研究を巡って」と題するシンポジウムを企画することとした.
  その中で,大石正学長からは生命起原研究の現状を把握するため,「最近の生命起原研究」と題してOQOL2009の中での問題となっている点およびその議論を紹介していただくこととした.また,神戸大学の中川和道先生からは「宇宙での化学進化における放射線・紫外線の役割」という題目で,化学進化における宇宙放射線や宇宙紫外線の役割を解説していただくこととし,大阪府立大学の川村邦男先生からは「前生物的化学に基づいてRNAワールド仮説を検証する」と題して,化学進化実験に基づいたRNAワールド仮説の可能性について解説していただくこととした.さらに,岡山大学の白井浩子先生からは,大阪大学の長野八久先生と共同で進めておられる研究成果の一つ「余剰進化論」を紹介していただくこととし,最後に,私(池原健二)から「タンパク質の0次構造と生命の起原」と題してランダムに重合しても水溶性で球状のタンパク質を高い確率で形成できる特異なアミノ酸組成(これをタンパク質の0次構造と呼んでいる)に焦点を当てながら,現在,主流となっているRNAワールド仮説とは異なるGADV仮説を紹介し,学会参加者の皆さんと議論する機会を持つこととした.
  このように,生命の起原をできるだけまともに議論しようとの思いで企画した「生命起原研究を巡って」というシンポジウムを通じて,少しでも,そして,一歩でも生命の起原の謎に迫ることができればと思っている.

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