TANPOPO: ASTROBIOLOGY EXPOSURE AND MICROMETEOROID CAPTURE EXPERI-MENTS

Akihiko Yamagishi1, Hajime Yano2, Kensei Kobayashi3, Shin-ichi Yokobori1, Masamichi Yamashita2, Hirofumi Hashimoto2, Makoto Tabata4 and Hideyuki Kawai4
1Department of Molecular Biology, School of Life Sciences, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji-shi, Tokyo 192-0392, Japan
2Department of Planetary Science, ISAS/JAXA, 3-1-1 Yoshinodai, Sagamihara-shi, Kanagawa 229-8510, Japan
3Department of Chemistry and Biotechnology, Yokohama National University, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan
4Department of Physics, Chiba University, 1-33 Yayoi-cho, Inage-ku, Chiba-shi, Chiba 263-8522, Japan
Correspondence: Akihiko Yamagishi, Laboratory for Cellular Biochemistry, Department of Molecular Bioloy, School of Life Sciences, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji-shi, Tokyo 192-0392, Japan.
Email: yamagish@ls.toyaku.ac.jp
(Received February 12, 2009; Accepted February 23, 2009)

(Abstract)

TANPOPO, dandelion, is the name of a grass whose seeds with floss are spread by the wind. We propose the analyses of interplanetary migration of microbes, organic compounds and meteoroids on ISS-JEM. Ultra low-density aerogel will be used to capture micrometeoroid and debris. Particles captured by aerogel will be used for several analyses after the initial inspection of the gel and tracks. Careful analysis of the tracks in the aerogel will provide the size and velocity dependence of debris flux. The particles will be analyzed for mineralogical, organic and microbiological characteristics. To test the survival of microbes in space environment, microbial cells will be exposed. Organic compounds are also exposed to evaluate the possible denaturation under the conditions. Aerogels are ready for production in Japan. Aerogels and trays are space proven. All the analytical techniques are ready.

(Keywords)

Astrobiology, micrometeoroid, interplanetary migration of microbes, ISS-JEM, organic compounds


たんぽぽ:宇宙ステーションでの微生物有機物捕獲,曝露実験

山岸明彦1,矢野創2,小林憲正3,横堀伸一1,橋本博文,山下雅道,田端誠4,河合秀幸4
1東京薬科大学生命科学部
2宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
3横浜国立大学大学院工学研究科
4千葉大学大学院自然科学研究科
連絡先:山岸明彦

要約

たんぽぽ(蒲公英,dandelion)は綿毛のついた種子を風に乗せて頒布し,その生息域を広げる多年草である.我々は,この名前のもと,国際宇宙ステーション-JEM(日本実験棟)上での微生物と生命材料となり得る有機化合物の天体間の移動の可能性の検討と微小隕石の検出および解析実験を提案する.我々は,超低密度エアロゲルを用いることで,微小隕石やその他の微粒子を捕集することが可能であると考えている.低軌道上で超低密度エアロゲルを一定期間曝露することで宇宙空間で微粒子を捕集する.エアロゲル表面と衝突トラックの顕微観察の後,エアロゲルの様々な解析を行う.衝突トラックの詳細な検討により,国際宇宙ステーション周辺のデブリのサイズと速度が明らかにできると期待される.エアロゲル中に残存した粒子に関して,鉱物学的,有機化学的,及び微生物学的な検討を行う.一方,宇宙環境下での微生物の生存可能性について検討するため,微生物を直接宇宙空間に曝露する実験も行う.同様に,宇宙環境下での有機化合物の変性の可能性を検討するため,有機化合物の宇宙空間への直接曝露実験も行う.これらの実験を行うための装置はすべて受動的な装置であり,そのための装置の基本構造,装置回収後の解析法も,既に確立されている.

1.はじめに

生命の起源の議論のなかで,生命は地球と他の地球外天体との間を移動したという考え方,すなわち地球外に生命の起源を求める「パンスペルミア仮説,胚種広布仮説(panspermia)」は,古くから主張されてきた[1,2].火星由来の隕石中に生物様の構造が見つけられたことで,この仮説が再び脚光を浴びた.他方,地球上に生まれた生物が隕石の衝突や火山の巨大噴火により地球の重力を振り切り飛び出す可能性もある.こうした可能性を検討するため,我々はこれまで,高々度における航空機と気球を用いた微生物採集実験を行い,採集された微生物の解析を進めてきた.国際宇宙ステーションの曝露部を用いることで,微生物採集高度を地球周回低軌道(約400㎞)にまで広げることができる.また,一旦地球から脱出した微生物が他の天体までの移動の間に宇宙空間環境で生存することができるのかをテストすることも重要な研究テーマである.そのため,我々は国際宇宙ステーション上での微生物の生存テストを行うことも提案している. 生命の起源に関して他の重要な問題として,有機化合物の前生物的生成がある.地球外および太陽系の外縁部は,有機化合物の前生物的生成の場である可能性がこれまでも指摘されてきた.この可能性を検証するため,これまで様々なシミュレーション実験が行われてきた.惑星間微小粒子の直接採取実験を行うことで,この可能性を直接検証できる可能性がある.さらに,地球外で生成した有機化合物が宇宙空間の環境下でどの程度変成するのかを推定することも重要な研究課題である.そこで,国際宇宙ステーション上で模擬複雑有機化合物を直接宇宙空間に曝露し,その変成過程と変成によって生じる物質の解析を行うことも提案している.
     超低密度エアロゲルの開発は,この微粒子の捕集実験において極めて重要である.シリカエアロゲルはSiO2からなり,透明性が高い.エアロゲルはこれまで人工デブリや惑星間塵の採集に用いられてきた.ここで提案する国際宇宙ステーション実験では,我々は超低密度エアロゲルを開発し,国際宇宙ステーション上でのエアロゲルの曝露テストを進める.開発された超低密度エアロゲル性能をこの提案による実験で実証することにより,太陽系内次世代サンプルリターンミッションでの利用可能性が示されるであろうと考えている.
     我々のデブリ捕集ミッションにより,多様なデブリが捕集されることが期待される.その中には,人工衛星(及び宇宙船)由来の人工デブリ,国際宇宙ステーション由来のデブリ,微小隕石様粒子,地球からの微小粒子が含まれると考えられる.国際宇宙ステーション上で捕集されたこれらの多様な微粒子の解析から,様々な重要な情報が得られるであろうと考えられる.
     我々は,これらのサブテーマを包含するミッションを「TANPOPO」と命名した.これは,たんぽぽの綿毛のついた種子が風に乗って新天地に運ばれることを地球と地球以外の天体の間で生命や生命の材料物質が移動することに擬えて命名したものである.以下,このミッションについてその概要を紹介する.

2.宇宙空間での微生物捕集

     高々度での微生物捕集実験はかなり古くから行われてきた.1936年から1976年までに,気球,航空機と気象観測ロケットを使用して,微生物捕集が行われた[3-5].これらの実験では,胞子を作る真菌類と,Bacillus属やMicrococcus属の真正細菌が単離された.しかし,それらの実験は現代の分子生物学が急速な発展をする前のものであり,古典的な微生物分類学的な解析が成されたのみであった.微生物がどの程度の高度まで至るかは現在不明である.しかしもし,微生物が現在検出されている高度よりも高い高度で見いだされるならば,そのことは生命の惑星間移動の可能性をより強く支持することとなる
.      以前,我々は航空機を使って微生物捕集実験を行った[6].高度0.8〜12 kmで採取された微粒子サンプルから,微生物が分離培養され,その遺伝子の解析が行われた.これらの分離株はStreptomyces属,Bacillus属,PaeniBacillus属という胞子形成種と,Deinococcus属に関連する種であることが明らかとなった[6].Deinococcus radioduransはかつて,Micrococcus属に分類されていた.したがって,以前の実験で分離されたMicorcoccusDeinococcus種を含んでいる可能性がある.
     D. radioduransは,最も放射線抵抗性を示す種として知られている.また,D. radioduransは高い紫外線耐性を示すことも知られている.そこで,我々は高々度で単離された分離株について紫外線耐性を検討した.分離株のうちの2つは,D. radioduransに比肩あるいは凌駕する高い紫外線耐性を示した[6].高々度における紫外線量は,地表表面よりはるかに高い.従って,高々度分離株が高いUV抵抗性を示すことはきわめて妥当である.
     我々は,気球を用いた微生物サンプリング実験も行った.サンプリング装置は,真空ポンプと濾過システムで構成される.大気を真空ポンプで吸引し,限外ろ過膜で濾過した.サンプリングは,フィルタの前に置かれる弁でコントロールした.およそ10 m3(常大気圧下での体積に換算して)の大気を,20から35kmまでの高度で吸引した.4種類の分離株が,気球サンプリング実験で得られた(Yang et al. unpublished).
     さらに高い高度で微生物の捕集を行うために,我々は国際宇宙ステーション曝露部での微生物捕集実験を提案している.国際宇宙ステーションの上の微生物/微粒子捕集は,真空環境下で行うため,航空機/気球を使用した捕集実験とは全く異なる採集方法を必要とする.我々は,サンプリング実験のために超低密度エアロゲルを使う予定である.微生物が国際宇宙ステーション高度で存在するなら,それらは地球周回軌道速度を持たなければならない.エアロゲルに対する微生物の相対速度は,国際宇宙ステーションの進行方向と微生物の進行方向に依存し,これらが正反対の場合に最高の値16km/sとなる.我々は,2段式軽ガス銃を使って,このような条件下での微生物サンプリングの可能性をテストした.
     宇宙空間での微生物の生存可能性を考える場合には強力な紫外線照射も重要なポイントである.単一の微生物の細胞が強い紫外線照射下で生存することは考えられない.しかし,微生物が鉱物内に包み込まれている場合,微生物が生存する可能性は高いと考えられる.我々は,微生物を含んだ粘土様鉱物モンモリロナイト粒子を用いて微生物の生存可能性をテストした.事前に蛍光色素で標識した微生物を含んだ粒子を2段式軽ガス銃で4 km /sまで加速し,エアロゲルに衝突させた.エアロゲルの蛍光顕微鏡観察により,蛍光を発する微小粒子がエアロゲルの衝突トラック内に見いだされた.現在,我々は蛍光粒子が我々が使った微生物に由来するものであるかを検討している.

3.宇宙空間における微生物の生存可能性の検証

     地球と火星を含む惑星間の微生物移動可能性を探るには,宇宙空間での微生物の生存可能性をテストする必要がある.このプロジェクトの一部として,我々は直接曝露実験によって宇宙空間での微生物生存可能性をテストすることを計画している.
     これまでいくつかの宇宙空間での微生物曝露実験が行われてきた[例えば7,8].しかし,大部分の実験では,サンプルはEVUを吸収するカバーによって保持されており,微生物を直接曝露したわけではなかった.したがって,これらの実験では,光の微生物細胞への影響を過小評価している可能性がある.
     またこれまでの曝露実験では,胞子形成細菌であるBacillus spp.が用いられた[7].胞子は極限環境に最も耐性を示す細胞形態である.他方,Deinococcus radioduransのような真正細菌が紫外線とγ放射線に極めて強い耐性を示すことが知られている.最近,我々は真正細菌の複数の株を高度10 kmほどから単離した[6].これらの株は,紫外線に対してD. radioduransより高い耐性を示した.このような極めて高いUV耐性を持つ微生物は高々度で生存する可能性がより大きい.
     宇宙空間で直接曝露された微生物が長時間生存することは考えにくい.しかし,その細胞が他の微生物細胞や粘土鉱物によって保護されるならば,内部の微生物は生存することが期待される.なぜなら,紫外線は数十〜数百μmの深度までは到達しないからである[7参照].
     我々のプロジェクトでは,D. radioduransと我々が新しく単離したUV耐性真正細菌を含む種々の微生物細胞を,曝露実験のために使用する予定である.これらの菌株に関して病原性は知られていない.また少なくともいくつかの遺伝子について塩基配列が明らかである.従って,回収後の解析でこれらの遺伝子の塩基配列を調べることで,回収された菌株が汚染による物なのかどうかを判断できる.凍結乾燥した細胞は,遮蔽カバーなしでも,金属プレートに強く結合することが期待される.細胞を,少なくとも1年間宇宙空間に曝露した後,地上に回収する.
     地上に帰還したサンプル中の微生物の生存を種々な方法で解析する.もっとも直接的な生存テストは曝露した微生物の培養テストである.プロジェクト遂行過程で混入した微生物による汚染の可能性は,遺伝子のPCR分析によってチェックする.この方法により,得られた微生物が実験に元々用いた種類であるか否か,また元々どのような場所で生育していた菌であるが判別可能である.

4.宇宙空間での有機化合物の捕集

     多種多様な有機化合物が隕石(炭素質のコンドライト)と彗星のような地球外天体で見いだされてきた.ChybaとSaganは地球外天体に由来する100kt以上の炭素が地球に届けられたと推定している[9].それは,地球の最初の生物誕生のための重要な炭素源であった可能性がある.実際,アミノ酸や核酸塩基のような生物関連有機化合物が炭素質コンドライトの熱水抽出物内に見いだされている.CroninとPizzarello [10]は,マーチソン隕石の複数のアミノ酸に関してL-異性体がD-異性体より多く存在することを報告した.そのような鏡像異性体の偏りは地球上の生物関連有機物のホモキラリティーの起源となる可能性がある.Nakamura-Messengerら[11]は,タギッシュレイク隕石中の有機物を溶解するとプロトセル状の小球をつくることを見いだした.複雑有機化合物は,ハレー彗星探索のための宇宙観測機に搭載された質量分析装置による直接的な分析でも見いだされた[12].スターダストミッションにより回収された彗星のちりの予備的な有機分析でもまた,Wild 2彗星コア[13]で複雑な有機化合物の存在が示された
.      以下の様に,惑星間塵(IDP)の中の有機化合物は地球の生命の誕生に隕石と彗星由来の塵よりも大きく寄与した可能性がある.第一の理由として,彗星と隕石によってもたらされた有機化合物よりも多くの有機化合物がIDPによってもたらされたと考えられることである.第二に,彗星と隕石由来の有機化合物が地球衝突時に破壊されてしまう可能性が高いのに対し,IDPは非破壊的に地上に到達する可能性が高い点である.これまで,実際多くのIDPが深海や南極大陸で収集されたが,それらは地球で汚染されている可能性が高い.我々は,TANPOPOプロジェクトの一部として,有機化合物の分析のために,IDPの捕集を提案する. この捕集実験の為には,超高速IDPを非破壊的に捕集することができるかどうかが最大の問題である.我々は,そのために超低密度エアロゲルを用いる計画である.我々は,ISAS/JAXAで2段式軽ガス銃を用いて,以下のサンプルを用いたシミュレーション実験を行った.その結果,PSGに吸着したR-aABAを衝突させたサンプルでは,ブランクに対して有意のR-aABAが検出された.しかし,R-aABAを単独で衝突させた場合にはR-aABAは検出されなかった.この結果は,エアロゲルを用いたとしてもアミノ酸単独では衝突時に消失してしまう事を意味している.しかし,無機的な基材に保護されたアミノ酸は検出が可能な程度に安定であることが示された.

5.宇宙環境における有機化合物の変成

     隕石,彗星とIDPの有機化合物は,何に由来するのか,と言うことは重要な問題である.Greenbergと Li [14]は以下のシナリオを提案した.即ち,恒星系(太陽系)は高密度な雲(分子雲)の中で形成されるが,この分子雲は10-20Kの極低温であるので大部分の分子は星間ダスト(ISD)の表面上へ凍りつく.ISDのそのような「氷外層」は,水,一酸化炭素,メタノールとアンモニアのような分子を含んでいる.氷外層を模擬した凍結混合物に高エネルギーの微粒子または紫外線光を照射すると,アミノ酸前駆体(加水分解の後,アミノ酸を与える分子)が形成された[15-17].これらのアミノ酸前駆体含有有機分子は,隕石や彗星等の母天体に取り込まれる前に,宇宙線と紫外線光によって変成すると予想される.さらにこれらは,おそらく太陽系の小天体上で再び変成する.即ちIDP中の有機化合物は地球に落下するまでに,宇宙線と太陽の紫外線を受けたと考えられる.
     有機化合物がどのように実際の宇宙環境で変成するのかは興味深い問題である.これまでも有機化合物の放射化学的および光化学物質的変成についての多くの実験が行われてきた.しかし,これらの実験は人工的光源あるいは放射線源が用いて行われた.そのうえ,極端紫外線(EUV)を透過する適当なウインドウの素材がないことから,地上実験では遠紫外線使用されなかった.宇宙空間での曝露実験も行われたが(例えばLDEFとBIOPAN),曝露サンプルはウインドウで覆われており,宇宙EUVはサンプルまで到達しなかった[18].
     我々は,国際宇宙ステーション—JEM曝露部で有機化合物を曝露させる計画である.曝露装置は,エアロゲルユニットに併置される.ここでは,金属基板の上へアミノ酸と「模擬星間有機化合物」を固定し,カバー無しで宇宙空間にダイレクトに曝露する計画である.模擬星間有機物質は,星間分子として存在する一酸化炭素,アンモニアと水に陽子照射することで作製する[19].この計画では,宇宙放射線とEUVを含む紫外線が同時にサンプルに照射されることになる.この実験から彗星/隕石由来の有機化合物がIDPの内部でどのように変成するかについての情報を得ることが可能になる.

6.微小隕石様粒子の国際宇宙ステーション上での捕集

     隕石の観察と収集は惑星科学の研究の中で,その母天体の研究を行うために進められてきた.黄道帯のダスト雲は地球表面からも観察できる.宇宙塵は南極で採取されたアイスコアに見いだされている.惑星間ダスト粒子は航空機を使って成層圏で採取されている.また,地球周回低軌道上の人工天体の表面への微隕石衝突が報告されている.これらの粒子の解析から,それらの起源とそれらの母天体についての情報を得ることができる.しかし,これまでの微隕石解析では地球由来の汚染の可能性が完全に除外できない.そこで,汚染のないかつ,できる限り破壊されていない微小隕石の捕集が望まれる.
     また,宇宙塵や人工デブリ分布の測定とモデリングは宇宙での人工飛体の運行上に重要な意義がある.すなわち,地球周回低軌道上の人工天体に関するリスクを推定する上でそれらデブリの分布を知ることは重要である.比較的大きなサイズのデブリは地上から観測されてきた.一方,より小さいサイズのデブリは回収された人工天体の表面で見つけられ,解析されてきた.実際これまで以下のミッションで回収された人工天体が解析されている:LDEF (84-90, NASA/ESA),EuReCa (92-93, ESA),HST (89-93, NASA/ESA),SFU (95-96, JAXA).また,受動的な微粒子捕集装置を用いた解析も行われた:Euro-Mir (96-97, ESA),ODC (97-98, NASA),MPAC-SEED (02-05, JAXA).しかし,デブリの数は常に増え続けており,その連続的なモニタリングが必要である.
     「TANPOPO」成功のかぎとなるのは,エアロゲルを使って行う粒子の非破壊的な捕集である.シリカエアロゲルは超低密度(0.03g/cm3以下を製作可能)な非結晶SiO2で,光学的に透明であり,超高速度の微粒子捕集実験に最も適していると考えられる.エアロゲルは,熱伝導性も極めて低く,熱伝導率はおよそ0.017W/mKである.これらの点から,エアロゲルは宇宙での利用に適した材料といえる.エアロゲルはEuReCa,ユーロミール,ODC,MPAC-SEED,スターダスト,その他で使用された.その意味でエアロゲルが宇宙で使用できることは証明されている.
     一例として,エアロゲルはスターダストプロジェクトで使用された[20-21].スターダストプロジェクトでは,彗星起源の塵および惑星間塵が捕集された.宇宙船は1999年に打ち上げられ,2002年に惑星間塵が捕集された.2004年に接近通過の間,Wild-2彗星の核から彗星由来の粒子が捕集された.サンプルは,2006年1月に帰還した.超高速度6.1km/s微粒子が成功裏に捕集された.この成功の第一報は既に報告されている.
     日本のエアロゲルは国際宇宙ステーション-MPAC-SEEDで使用された.このミッションでは,捕集装置は2001年に打ち上げられ,およそ400kmの地球周回低軌道上の国際宇宙ステーションロシアモジュールに置かれた.捕集装置は,2002,2004と2005年に順次回収された.しかし,捕集装置は,国際宇宙ステーションのただ1面だけで曝露された.国際宇宙ステーションの移動方向に対してどの方向に捕集装置を向けるかによって,捕集される微粒子の種類が変わることが知られている.東面(国際宇宙ステーションの進行方向)では人工デブリを捕獲する可能性が最も高い.西面と宇宙面は,惑星間塵を捕集する可能性が高い.
     TANPOPOチームの一つのグループでは,エアロゲルを用いた超高速度の隕石様鉱物捕集可能性をすでにテストした.CM2マーチソン由来の粉末を2段式軽ガス銃で6.2km/sまで加速し,エアロゲルに衝突させた[22].この実験で形成されたエアロゲル中のトラックが調べられ,微粒子がトラックの先端で見いだされた.見いだされた微粒子の切片を電子顕微鏡写真で観察すると,微粒子の外周領域は,一度融解したことを示すアモルファス構造をもっていた.しかし,微粒子中心部では,マーチソン由来粉末本来の結晶構造が保持されていた.これらのことは,超高速の微小隕石様鉱物を少なくとも部分的には無傷で捕集可能であることを示している.
     エアロゲルタイルは,国際宇宙ステーション-JEM曝露部のいくつかの方向(すなわち東,南,北面)を向けて設置されることが望ましい.信号接続は,全部の曝露期間の間に必要としない.地球周回低軌道での1年以上の曝露の後,トレイは国際宇宙ステーション与圧モジュールで密封され,ソユーズ/STS/CEVで地球に帰還する.しかし,インターフェースの構造は今後調整される必要がある.

7.微粒子捕集用エアロゲル

     シリカエアロゲルは,その占める体積の最大99.5%が空隙から成る非結晶質の固体である.エアロゲルは視覚的に透明で固体としては非常に低い屈折率をもつことから,粒子識別装置の光輻射体として素粒子・原子核実験で広く用いられている.疎水性を付与することもでき,取り扱いのしやすいことも利点のひとつである.我々は高エネルギー加速器研究機構(KEK)および松下電工(株)と共同でエアロゲルを開発してきた[23].現在では,密度0.01-1.2g/cm3という広い範囲のエアロゲルを自在に製作できる[24].我々の製法によるエアロゲルは,国際宇宙ステーション上での宇宙塵およびスペースダスト採集実験(ISS-SM MPAC-SEED)において実際に使用された.エアロゲルは,低いバルク密度・透明性・断熱性を備え,宇宙空間での超高速微粒子の非破壊採集に最適な素材であると考えられる.
     TANPOPOミッションでは,軌道上で超高速微粒子を採集する際,いかに微粒子に加わる衝撃や熱変成を回避するかが重要である.すなわちエアロゲルの微粒子採集性能が,採集物の科学分析の成否の鍵を握る.そのため,現在我々の製法で製作可能な最低密度である0.01g/cm3かそれ以下のエアロゲルを導入する.これまで宇宙で実際に運用されたエアロゲルの密度は,0.03g/cm3前後である.この密度のエアロゲルは,実験装置への設置という観点では適切であるが,相対衝突速度6km/s以上における微粒子の非破壊採集としてはまだ不十分かもしれない.我々は現在,0.03g/cm3未満の超低密度エアロゲルを装置にどのように装着するかについて検討している.その方法の候補のひとつは,適切な強度をもったエアロゲルのベース層と,微粒子捕集に必要な超低密度エアロゲル層を組み合わせることである.既に我々は,異なる密度を有する複層を一体としたエアロゲルの開発に成功している.
     我々の第一の目的は,宇宙における微生物および有機物の伝播,さらには宇宙塵やスペースデブリに関する貴重な情報を得ることである.加えて我々は,階層的な密度構造をもったエアロゲルを国際宇宙ステーション-JEMに搭載することでその運用実績を積み,宇宙環境でのエアロゲルに基づく微粒子捕集装置の能力を検証する.TANPOPOで使われる極めて低密度のエアロゲルは,微粒子捕獲活動の範囲を拡大し,将来の太陽系探査に革新的な技術を提供することが期待される.

8.終わりに

     TANPOPOミッションの千葉大学グループは,超低密度エアロゲルを作成する技術を有する.同じ方法で作成した日本製のエアロゲルは既に,微粒子サンプリング実験のために国際宇宙ステーション Russian Serviceモジュールで使われた.エアロゲルトレイの基本的なデザインは,JAXAによるMPAC-SEEDでもテストされた.TANPOPOミッションは,全曝露期間に渡り,通信等の電力消費型の活動を必要としない.低地球周回軌道での1年以上の曝露の後,トレイは国際宇宙ステーションに回収される.
     TANPOPOミッションチームは,細菌の分析,有機化合物分析と微小隕石分析においてすでに長い経験を有している.従って,すべての解析手法は準備ができている.

References

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