DESIGN OF AN OPEN SYSTEM IN THE THERMODYNAMIC SENSE FOR THE CHEMICAL EVOLUTION OF BIOPOLYMERS. 1. INFLUENCE OF THE STEPWISE ADDITION OF ACTIVATED NUCLEOTIDE MONOMER TO THE TEMPLATE-DIRECTED FORMATION OF OLIGOGUANYLATE

Kunio Kawamura* and Akira Nakamura

Department of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University,
Gakuen-cho 1-1, Sakai, Osaka 599-8531, Japan.
Fax: +81-72-254-9910; Email: ka w a mur a@c hem .o s aka f u- u. ac .j p
(Received: November 17, 2006 Accepted: December 25, 2006)

(Abstract)

     To construct a flow reactor system, which enables to simulate the chemical evolution of biopolymers in an open system in the thermodynamic sense, the influence of stepwise addition of the 2-methylimidazolide of guanosine 5’-monophosphate (2MeImpG) to the template-directed formation of oligoguanylate (oligoG) on polycytidylic acid (polyC) template (TD reaction) was investigated. Both the experiment and the computational simulation of the addition of 2MeImpG showed that the higher oligoGs were accumulated by the addition of 2MeImpG. In addition, the elongation of oligoG was slightly effective when the activated nucleotide monomer was added within a shorter interval period, where the total amount of the addition of the activated monomer was kept as constant. This fact indicates that the continuous supplement of 2MeImpG would facilitate the formation of oligoG rather than the stepwise addition of 2MeImpG when the total amount of guanosine unit was increased. The present study showed that the computer simulations concerning the TD reaction can be used to evaluate experimental data of the TD reaction.

(Keywords)

open system, experimental design, nucleotide, biopolymer, thermodynamics, kinetics,

熱力学的な開放系の化学進化実験系の試作とその解析:(1)オリゴグアニル酸の鋳型指示生成反応を用いるモノマーの逐次供給の影響

川村邦男*,中村光

大阪府立大学大学院工学研究科応用化学分野
〒599-8531大阪府堺市学園町1-1
Fax: 072-254-9910; Email: k a w am u ra@c h em. o sa ka fu-u .a c . jp

1. 序論

     生物はエネルギーと物質を環境との間で交換することによって生命活動を維持している.つまり,生命系は熱力学的な開放系である.従って化学進化の研究では,生命に発展した化学反応系は熱力学的な開放系であるという視点を持ち込むことが必要である.このような条件を意図して行った実験的な研究は少ない.例えば,Millerの実験[1]や今井・松野らの深海底の熱水噴出口を模した実験[2]は,放電あるいは熱エネルギーを外から供給する系であると見なすことができる.しかし,これらの例のように熱や放射線を外部から加えることは比較的簡単にできるが,物質を流出入させる系でしかも溶液系の化学進化の実験は少ない.Ferrisらは鉱物触媒を用いてモノマーを定期的に添加して長鎖のオリゴヌクレオチドやオリゴペプチドを生成させた[3].また,RNAのin vitro selectionは原料を段階的に供給し不要物を排出するので,一種の開放系と見ることができるだろう.ただし,生物由来の酵素の助けが必要であり,化学進化によって生成し得る非生物的な素材を使って構成した系はまだ見あたらない.しかし,例えば化学工業プラントで用いられる槽型流通反応器や微生物の研究のためのchemostatでは,系への物質の導入・導出を連続的に扱うことができるが[4],化学進化の実験ではほとんど用いられてこなかった.従ってRNAやタンパク質の化学進化の研究でも,開放系という視点にてらして研究することが必要である.そのためには,適当な反応系を選び原料を追加し生成物から不要物を排出できる実験系を構築しなければならない.またこの種の実験系では反応系を開放系にする効果を調べるに足る十分な精度が必要である.
     そこで本研究ではこの種の実験系を構築する研究の第一段階として,活性化ヌクレオチドを用いるオリゴヌクレオチドの鋳型指示反応[5]を使って,定期的に原料モノマーを供給する実験を行った.またこの反応系の各経路の速度定数を決定し,それらの値に基づいてモノマーを供給する効果をシミュレーションした.その結果,系内のヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が一定に保たれる系ではモノマーを定期的に供給する効果は小さく,また系内のヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が大きくなる系ではモノマーを添加する時間間隔を小さくするとオリゴヌクレオチドの生成量が少し増加した.さらに,これらの現象を計算機シミュレーションを用いて検証し,この反応系は開放系を構築するための素材として十分な精度と再現性を持っていることを明らかにした.

2.実験およびシステムの設計

2.1.試薬
     グアノシン5’-モノリン酸2-メチルイミダゾリド(2MeImpG)は既報の方法[6]に従って合成した.リボヌクレアーゼA(RNaseA,Bovine Pancrease起源R-5500 Type VII-A)はSIGMA社製のもの,およびポリシチジル酸(polyC)は生化学工業社製のものを用いた.その他の試薬は全て特級品を用いた.

2.2.生成物の分析
     生成物は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に陰イオン交換カラム(TOSOH,DNA-NPR,4.6 mm×12.5 mm)あるいは逆相分配カラム(ODS-2,GLサイエンス,4.6 mm×15 mm)をつけて分析した[7].イオン交換HPLCは,溶離液としてA: pH=11.0水溶液,B: 1.5 M NaCl,pH=11.0を用い,Bの割合が20%(t = 0 min)から100%(t = 70 min)となる直線グラジエントを用いて分析した.流速は0.75 mL/min,カラム温度35℃,検出は253 nmで行った.オリゴグアニル酸(oligoG)の生成量はイオン交換HPLCの結果から計算した.ただしこの方法では2MeImpG,グアノシン5’-モノリン酸 (5’pG),および polyCの分解生成物のシチジン3’-モノリン酸(C3’p)を分離できない.そこで逆相分配HPLCを用いて,溶離液としてA:0.005 M NaH2PO4,pH 3.5,B: 0.01 M NaH2PO4,40 % CH3OH,pH 4.0を用い,Bの割合が0%(t = 0 min)から40%(t = 30 min),100%(t = 45 min)となるように上記の装置のシステムコントローラーの2の曲線グラジエントを用いてこれらの成分を分析した.流速は1.0 mL/min,カラム温度35℃,検出は253 nmで行った.

2.3.鋳型指示反応
     あらかじめ2.59 mgのポリシチジル酸(polyC)をプラスチックバイアルにとり0.25 mLの蒸留水に溶かし,さらに2.26 mgの2MeImpGを加えて溶解した.この溶液に2.0 M NaCl,0.4 M MgCl2,0.2 M HEPES (pH = 8.0)を含む溶液(HEPES buffer)を0.25 mL加えてよく撹拌し,ごく微小体積の塩酸あるいは水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを8.0に調節した.この溶液には0.01 Mの2MeImpGと0.015 MのpolyC,1.0 M NaCl,0.2 M MgCl2,0.1 M HEPES(pH = 8.0)が含まれる.同様にして2MeImpGあるいはpolyCの濃度が異なる溶液を調製した.これらの溶液を25〜50℃で3日間反応させた.試料を定期的に採取し液体窒素で瞬時に凍結した.反応後に溶液中のpolyCを分解するために,試料0.03 mLに対して0.0112 mLのRNaseA溶液(3600 unit)および0.2 M EDTA溶液0.018 mLを加えて,37℃で18 h間処理した.これを反応Aとする.      
一方,これと同様の方法で調製した試料溶液を反応させ,所定時間ごとに試料を採取した後に原料等を含む溶液を添加する以下のような実験を行った.
反応B:
試料を12 hごとに50 μL採取し,0.01 Mの2MeImpGおよび0.015 M polyCを含む溶液を50 μL添加した.ここではグアニンのモノマー単位での濃度は一定であり,また他の成分の濃度も一定である.
反応C1:
試料を24 hごとに100 μL採取し,0.02 Mの2MeImpGおよび0.015 M polyCを含む溶液を100 μL添加した.すなわち2MeImpG濃度は増加し,その他の成分の濃度は一定である.
反応C2:
試料を12 hごとに50 μL採取し,0.02 Mの2MeImpGおよび0.015 M polyCを含む溶液を50 μL添加した.すなわち2MeImpG濃度は増加し,その他の成分の濃度は一定である.

2.4.計算機シミュレーション
     反応速度定数の決定および反応挙動のシミュレーションにはSIMFIT[8]を用いた.

3.結果および考察

3.1.鋳型指示反応を用いるモノマーを逐次供給する効果
     鋳型指示反応(Scheme 1)で原料を添加する効果を調べる条件として,反応温度について検討した.鋳型指示反応は25℃では約3日間で数10%進行するが,反応が数時間で終了する程度の速さを持つ条件の方が追跡しやすい.そこで反応速度を少し高めるために40℃および50℃で鋳型指示反応を試みた.しかし反応効率は非常に低くなった.これは既報の2MeImpGの鋳型指示反応の温度依存性の研究と一致している.ところが,Zn(II)触媒存在下でグアノシン5’-モノリン酸イミダゾリド(ImpG)からoligoGが生成する鋳型指示反応は60℃でもかなり反応効率は高く,本結果と異なっている[7].2MeImpGをモノマーとして用いるときに反応効率が低くなる原因として以下の理由が考えられる.鋳型指示反応では2〜3分子の活性化ヌクレオチドモノマーが鋳型polyC上に会合して配列し(Scheme 1),鋳型上でそれらが縮合してリン酸ジエステル結合が生成する[9].この会合はモノマー間の疎水性相互作用,π-π相互作用および鋳型との水素結合からなると考えられるので,温度上昇に伴ってこれらの相互作用が弱まるので鋳型指示反応の効率が低下すると予想される.一方,ImpG系ではZn(II)の働きによってこれらモノマー間および伸長するoligoGとの会合が補強され2MeImpG系よりも高温下でoligoGが効率よく生成したものと推定される.2MeImpG系ではZn(II)を含まないのでこのような効果が弱く,温度上昇によって反応効率が大きく減少したものと考えられる.これらの結果,本研究では温度を25℃とした.また,鋳型指示反応の効率はモノマーと鋳型polyC濃度にも依存するので2MeImpGを0.005〜0.015 M,polyCを0.01〜0.02 Mの範囲で用いることとした.



     これらの条件を考慮して実験項に示した条件下で鋳型指示反応を行った.イオン交換HPLCによるクロマトグラムをFig. 1a – 1dに示す.ここで,モノマーおよびpolyC濃度条件は既存の研究で用いられてきた代表的な条件よりも低いが,oligoGは効率よく生成した.反応A(Fig. 1a)は通常の鋳型指示反応で,反応B(Fig. 1b)では反応溶液の10%(50 μL)を12 hごとに採取し,そのとき初期濃度の2MeImpG(0.01 M)およびpolyC(0.015 M)を含む溶液を50 μLずつ補充した.従って反応Bではモノマー単位でのグアニン濃度は一定である.この2つの系ではoligoGの生成量は反応Aでわずかに大きかった.一方,原料を供給する反応C1およびC2の両方で生成物の量は増加した(Fig. 1c, 1d).C1およびC2では24 hあたりで外部から添加するモノマーの総量を同じとしたが,厳密には 24 hごとではグアノシンモノマー単位あたりの量はC1の方が0.23%大きい.ただし本実験ではこの差は無視できる.さらに詳細に議論するためにこれらのHPLCによる分析に基づいて,各反応経時変化を追跡した.2MeImpGの減少と5’pGの生成(Fig. 2a – 2d),およびoligoGの生成挙動を見るために5mer,10merおよび15merの経時変化を調べた(Fig. 3a – 3c).これらの結果から,反応AおよびBにおいては鎖長が小さいoligoGの生成率は反応Bで反応Aよりもやや低く,鎖長が大きくなると反応Bの方がoligoGの生成率はやや高いという傾向が認められた.反応B,C1,およびC2では2MeImpGの減少(Fig. 2b – 2d)において,試料を採取して新たに外部から2MeImpGを添加したことによって2MeImpG濃度が階段状の変化として現れている.反応時間が短い範囲ではoligoGの生成量は,反応C1およびC2は反応Aおよび反応Bと比べてあまり違わなかったが,反応時間が40 h程度からは反応C1およびC2で大きくなった.反応C1およびC2の系ではモノマーを追加するので,ヌクレオチドの総濃度は増加するのでoligoGの生成量が大きくなることは自然である.
      一方,24 hごとに比べると反応C1とC2では同量の2MeImpGを追加したことになるが,生成量は反応C2の方が大きくなる傾向が認められる. これは,モノマーを逐次添加する時間間隔を変えると生成量が変化することであり興味深い.この現象は,反応C1およびC2と同様にして異なる濃度と周期で試料を採取しモノマーを追加した場合にも認められた.例えば0.0125 Mの2MeImpGと0.02 MのpolyCを含む(他の塩類等の濃度は反応C1およびC2と同じ)反応溶液50 μLに対して,8hごとに試料を0.05 mL採取し0.375 Mの2MeImpGと0.02 MのpolyCを50 μL加える(反応D1),または, 16hごとに試料を100 μL採取し0.375 Mの2MeImpGと0.02 MのpolyC溶液を100 μL加え(反応D2),反応挙動を追跡した.この場合の4merおよび14merのoligoGの生成量は反応D1でD2よりも高く,上記の系での結果と同様であった.
      以上のように,鋳型指示反応系ではヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が一定の場合にはモノマーを供給するとoligoGの生成量がやや減少した.一方ヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が増加する場合にはモノマーを定期的に追加しかつその時間間隔を小さくするとoligoGの生成量は増加した.しかしこれらの効果は微少であり,また本実験系は反応生成物の分析と解析が複雑なので,反応Bあるいは反応C1やC2で実験によって認められた違いが妥当であるのかどうかについてさらに検証することが必要である.そこで,本実験を計算機シミュレーションして反応挙動を比較することにした.



Fig. 1. Anion-exchange HPLC chromatograms for the template-directed reaction of oligoG on a polyC template. Initial reaction conditions: [2MeImpG] = 0.01 M, [polyC] = 0.015 M, 1.0 M [NaCl] = 1.0 M, [MgCl2] = 0.2 M, [HEPES] = 0.1 M, pH = 8.0. A: control; B: A 50 μL sample solution was withdrawn at every 12 h and then a 50 μL solution containing 0.01 M 2MeImpG and 0.015 M polyC was added; C1: A 100 μL sample solution was withdrawn at every 24 h and then a 100 μL sample containing 0.02 M 2MeImpG and 0.015 M polyC was added; C2: A 50 μL sample solution was withdrawn at every 12 h and then a 50 μL sample containing 0.02 M 2MeImpG and 0.015 M polyC was added.




Fig. 2. Reaction curves for the template-directed reactions of oligoG on a polyC template. Reaction conditions are the same as shown in Fig. 1. a: reaction A, b: reaction B, c: reaction C1, d: reaction C2; open circles: 2MeImpG, closed circles: 5’pG.




Fig. 3. Reaction curves for the template-directed reactions of oligoG on a polyC template. Reaction conditions are the same as shown in Fig. 1. a: formation of 5mer, b: formation of 10mer, c: formation of 15mer. Reactions: open circles: A, closed circles: B, open squares: C1, closed squares: C2 as shown in the caption of Fig. 1.


3.2. 計算機シミュレーションとの比較
上記の反応A,B,C1,およびC2について以下のモデルに従ってoligoGの生成量を計算した.
2MeImpG
2MeImpG
2MeImpG+2MeImpG(pG)2
(pG)2+2MeImpG(pG)3
・・・
(pG)18+2MeImpG(pG)19
それぞれの過程の速度定数としてKanavariotiらの文献値[9],khy = 6.4 x 10-3 h-1,k2 = 0.11 M-1 h-1,k3 = 29.0 M-1 h-1,k4 = k5 = … = k19 = 65 M-1 h-1を最初に用いた.シミュレーションはなるべく鎖長の大きなものまでを定義した方が実験モデルに近くなると考えられるので[7],ここでは19merまでを定義した.実験とそれに対応するシミュレーションの結果を比較したが,活性化ヌクレオチドの減少の傾向はよく一致したが,ほかの挙動はあまり一致しなかった.これは,鋳型指示反応の速度定数はヌクレオチドモノマー濃度,鋳型濃度や温度などの実験条件によって変化するためであると考えられる.そこで,反応Aの実験結果からこれらの速度定数を改めてSIMFITで決定し,その値に基づいてシミュレーションを行うことにした.
     得られた速度定数は,khy = (9.43 ± 0.01) x 10-3 h-1,k2 = (3.38 ± 0.05) x 10-2 M-1 h-1,k3 = (5.72 ± 0.18) M-1 h-1,k4 = k5 = … = k19 = (19.6 ± 0.9) M-1 h-1であった.本実験で得られた速度定数とKanavariotiらの結果を比較すると,2MeImpGの加水分解速度については両者は比較的近い値であったが,本実験で得た他の速度定数はKanavariotiらの結果と比べて小さい傾向が認められた.本研究で得た速度定数を用いてシミュレーションした結果をFig. 4a – 4d,および5a – 5cに示す.2MeImpGの減少については実験値と計算値でかなり良く一致した.またoligoGの生成についても,5merでは計算値の方が小さい傾向が見られるが,他では生成挙動はおおむね良く一致した.
      ところで,計算機シミュレーションではある鎖長までのoligoGの生成をあらかじめ定義しなければならないが,実際の実験においてoligoGの生成の鎖長の限界を定義することは無意味である.本モデルでは4mer以上の生成速度定数を一定と仮定したが,最長鎖長(19mer)のoligoGは伸長反応が定義されないので生成量が増大する傾向がある.すなわち,4mer以上の生成速度を一定としてシミュレーションする場合には鎖長の増加とともにoligoGの量は減少するが,19merの生成量だけは18merよりも大きくなる傾向がある.しかし,本系では上述のように長い鎖長までを仮定してシミュレーションすることでその影響を小さくすることができた.oligoGの生成量は,反応C2>C1>A>Bの序列で減少しておりこの傾向は実験値と計算値で一致した.特に,AとB,あるいはC1とC2の違いは小さいにも関わらず,計算でその傾向を再現できたことは本研究の実験結果および実験モデルの解析法とシミュレーションが妥当であることを示している.すなわち oligoGの生成量は,試料を採取してつぎ足す時間間隔を短くすると12 hごとにつぎ足した方が24 hごとにつぎ足すよりもわずかに大きくなることをシミュレーションで検証できた.同時に,計算によってもっとデリケートな予測をすることも可能であることを示唆している.そこで,C1およびC2と同じ反応系で採取と添加のタイミングを6 hにした場合のシミュレーションを行った.その結果,6 hの場合には12 h間隔で原料を追加する場合よりもさらにoligoGの生成量が大きいことが予測された(Fig. 5b点線). この事実は,時間間隔を小さくする,すなわち連続的に原料を供給し排出する場合にoligoGの生成量はさらに増加する可能性を示唆している.
      一方,反応Bでは実験ではoligoGの生成量は反応Aに比べて小さくなることが認められたが,これはヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が一定に保たれていても,モノマーを逐次供給して生成物を除去する系ではoligoGの生成効率が低くなることを示唆している.そこで,定期的にモノマーを加えるときの時間間隔を変えてoligoGの生成量がどのように変化するか計算機シミュレーションで調べた(Fig. 6a – 6c).逐次モノマーを添加する時間間隔を,0 h,36 h,24 h,および12 hとして計算し比較した(Fig. 6a – 6cのそれぞれ細い点線,細い実線,太い点線,太い実線).その結果,時間間隔を大きくした方が所定時間ごとのoligoGの生成量は大きくなることが予測された.15merでは添加する時間間隔による違いは非常に小さくなった.これらは反応C1およびC2の場合とは一見異なる傾向である.ヌクレオチドの総濃度が一定に保たれる場合には,モノマーを添加することでoligoGの生成量が増加する効果よりも,生成したoligoGを系から取り除く効果の方が大きいことを示している.従って,反応Bにおいてモノマーを添加する時間間隔を無限小にした場合,すなわち連続的な完全混合反応槽において供給されるモノマー溶液が反応溶液と同じで,かつ供給と排出の流速が同じ場合には,oligoGの生成量は小さくなることを示唆している.



Fig. 4. Simulated reaction curves of the template-directed reactions corresponding to Fig. 2. a: reaction A, b: reaction B, c: reaction C1, d: reaction C2; top lines at time 0: 2MeImpG, bottom lines at time 0: 5’pG.



Fig. 5. Simulated reaction curves of the template-directed reactions corresponding to Fig. 3. a: formation of 5mer, b: formation of 10mer, c: formation of 15mer. Solid lines from top to bottom: a: C1, C2, A, B; b and c: C2, C1, A, B; dashed line in b: reaction conditions are the same as C1 and C2, but the interval period is 6 h.



Fig. 6. Simulated reaction curves of the the template-directed reactions corresponding to Fig. 2a and 2b and its variations. a: disappearance of 2MeImpG and formation of pG, b: formation of 5mer, c: formation of 10mer. Lines: thin dashed lines: no monomer was added; solid lines: a 150 μL sample solution was withdrawn at every 36 h and then a 150 μL solution containing 0.01 M 2MeImpG and 0.015 M polyC was added; bold dashed lines: a 100 μL sample solution was withdrawn at every 24 h and then a 100 μL solution containing 0.01 M 2MeImpG and 0.015 M polyC was added; bold solid lines: reaction B.


3.3.まとめと今後の課題
     以上の実験とシミュレーションによって本鋳型指示反応を用いて原料をつぎ足す反応について以下のことが分かった.また,開放系で鋳型指示反応をする場合の問題点も予測された.
      1)モノマーを定期的に供給し生成物を含む溶液を排出するとき,ヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が一定に保たれるとき,oligoGの生成量は小さくなる.また供給する時間間隔を小さくするとoligoGの生成量はより小さくなる.
      2)同様にして,原料モノマーを定期的に供給しヌクレオチドの塩基あたりの総濃度が大きくなるときには,鎖長の大きなoligoGの生成量は増加する.oligoGの生成量の増加はヌクレオチドの全体量の増加に伴うものであるが,その場合には試料を採取しモノマーを追加する時間間隔を小さくするほどoligoGの生成量は大きくなった. 3)計算機シミュレーションではオリゴヌクレオチドの生成はある鎖長までしか定義できないという問題があるが,シミュレーションで定義する鎖長を大きくすることでほぼ解決できる.
      4)反応系にモノマーなどを逐次供給する効果を実験によって識別できることが分かった.しかし,本研究で示した反応Aと反応Bの違いや,反応C1と反応C2の違いは微小である.従って,フロー系などのより複雑な系の挙動を調べる場合には実験とシミュレーションを併用して評価することが望ましいことを知った.
     

謝辞

SIMFITはvon Kiedrowsiki教授にいただきました.ここに謝意を表します.

引用文献

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