Possibility for making 'a Life'

Hajime Honda
Department of BioEngineering, Nagaoka University of Technology
Kamitomioka 1603-1, Nagaoka, Niigata, 940-2188, JAPAN

Abstract

    It is indeed difficult to make a living things even a very primitive one. In spite of the difficulties, we have aspired to understand the origins of life in an experimental manner. Standing on the tons of knowledge brought about by preceding researchers, I wonder if it is possible to reconstruct a primitive type of life. In this review, a part of knowledge for prebiotic synthesis of poly-nucleotide will be firstly summarized by Hiroaki Sawai, then the aims of a recently started project entitled メWhole Cell Projectモ will be introduced from the view point of the origins of life by Seiki Kuramitsu, the project leader of the project. I hope this small review will be a signpost for the young scientist who is just beginning the research on the origins of life.


「生命をひとつ、創る」の特集にあたって

本多 元 長岡技術科学大学・生物系
(〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603-1)

独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋生態環境研究部
237-61 神奈川県横須賀市夏島町2-15

 生命の特徴として、3つの性質が挙げられています。外界と隔てる隔壁を持ち、自己複製でき、代謝できる事です。従来,生命の起源を考える場合、必ずこれらの点を考慮に入れていました。多くの研究は、これらのうち、RNAワールド仮説など、特に自己複製という点に重点を置いています。つまり「遺伝子」が生命にとって最も重要であるとしています。従って、この意味で遺伝子の非生物的合成のメカニズムは、生命の起源を知る上で重要であります。本学会の会長でもある澤井先生は、Orgelや Ferrisと並んでRNAの前生物的合成について,先駆的な業績を残して来られました。さらに,自己複製にもまして重要なのは、代謝機能です。主にこの機能を担うのは、カルボン酸であり、タンパク質であるわけです。代謝機能に関わる研究は、生命の起源の分野ではほとんど行われていません。なぜなら,代謝などという高級な機能は、生命の誕生のずっと後から備わったとほとんどの人が考えているからです。しかし,生命の定義に関わる「代謝」機能は,大きく分けて、二つの側面を持っていると考えられます。ひとつは、エネルギーを取り出すこと,もうひとつは、生命体の内外について物質の出入りを行うことです。この機能が生命にとって重要であることはいうまでもありませんが、また、とりもなおさず,生命の起源に関する理解が、物質レベルの理解だけでは到底及ばないことも示しています。それどころか,既存の生物のうち,最も基本的と思えるバクテリアについてさえ,その機能を完全に知り尽くしているわけではありません。
 好熱菌を丸ごと一匹解析しようという倉光先生のプロジェクトは、生命の起源を考える上でも大変興味深い研究です。既に、原始地球環境において,非生物的にさまざまな生体関連物質が合成・同定されてきています。いまだ、明らかな生理機能を持つ具体的な物質は見出されていませんが、その日は近いような気がします。自己複製機能を担う遺伝子と、代謝機能を担うタンパク質を適切に相互作用させることで、ほんとうに生命を創り出す事ができるでしょうか?この問題は、生命の起源と進化を考えるこの学会のひとつの大きな課題だったのではないでしょうか?
 実験室で、生命をひとつ丸ごと創ると言うのは、物質レベルの構築だけでは実現できるわけではありません。必用な物質をすべて用意しても、正しく組織化しなければ、死体を造ってしまうことになる事は明らかです。この意味で、遺伝子以外の物質についてその物理的生理的機能を理解することは生命の起源解明の鍵を担うと考えられます。伏見譲先生は,遺伝子やペプチドの分子が持つ性質だけで自己複製し増殖できる,という極めて興味深い提案をされています。最初に挙げた三つ性質のうち、外界と隔てる隔壁は必要ないということです。先生は分子進化工学という新しい学問領域を開拓され、原初的な分子の進化について実験的に研究を進められております。化学進化と生物進化を実験レベルでつなげることが出来る画期的な研究であると考えられます。
 我々研究者は、まだ、生命の起源と生物の祖先を結び付けて考えることができません。しかし、時間をさかのぼれば、必ず生命が誕生した時に出会えるはずですし、多くの普通の人々は、そう考えています。生命が誕生する前の物質レベルの進化を,我々は化学進化と呼んでいますが、生体関連物質をいかに収率良く合成できても、進化とは結びつかないように感じます。本学会員による膨大な量の研究成果が蓄積されてきた今、そろそろ「水中での有機化学」から、「生命の発生」への足がかりを考えてみてはどうでしょう? 生命の起源研究のための新たなステップを探すため、入り口と出口をもう一度確認しようと考え、本特集では,澤井先生と倉光先生に研究内容のご紹介をして頂くことと致しました。ちゃんとした「生命」を創るためには、一体どういう実験をしたらいいでしょう?新たにこの分野の研究に興味をお持ちの若い研究者の方々の自由な発想が求められていると感じます。

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