WHAT IS THE PHYSIOLOGICAL FUNCTION OF D-AMINO-ACID OXIDASE?

Ryuichi Konno
Department of Microbiology, Dokkyo University School of Medicine, Mibu, Tochigi 321-0293, Japan
FAX: 0282-86-5616
E-mail: konno@dokkyomed.ac.jp

Abstract

   D-Amino acid oxidase (DAO) catalyzes oxidative deamination of D-amino acids (steroisomers of naturally occurring L-amino acids), producing 2-oxo acids, hydrogen peroxide and ammonia. In higher animals DAO is mainly present in the kidney, liver and brain. However, since its substrates (D-amino acids) are considered very rare in higher animals, the physiological role of DAO has been enigmatic since its discovery in 1935. We are interested in why we have such a curious enzyme in our body.
   We believed that mutant animals having dysfunctions in DAO would be useful for the elucidation of the physiological function of this enzyme. We chose mice as our experimental animals due to their small size, short generation time, clear genetic background, and their close relationship to humans. A screening method for mutant mice possessing reduced levels of DAO activity was devised. Mutant mice lacking DAO activity were isolated and their strain was established.
   Genetic cross experiments between the mutant mice and normal mice indicated that mice have one gene encoding DAO and that it is expressed in the kidney and brain. The DAO gene was transmitted through the Mendelian manner. The cross experiments revealed a gene dosage effect on DAO activity: mice carrying two normal DAO alleles have twice the DAO activity than mice carrying one normal and one mutant DAO allele. The DAO gene was mapped at 65 cM on the chromosome 5 by the linkage analysis. Fluorescence in situ hybridization mapped this gene at E3-F on chromosome 5.
   The nucleotide sequence analysis of the cloned DAO cDNA revealed the presence of a nucleotide substitution in the middle of the coding region of mutant DAO. This nucleotide substitution caused a substitution of amino acid residue of DAO. The transfection and expression of the mutant and normalized DAO cDNA in cells in culture verified that the nucleotide substitution was the real cause of the loss of DAO activity.
   From the nutritional experiments using the mutant and normal mice, DAO was shown to be the most important and indispensable enzyme in the utilization of D-amino acids in the body.
   Large amounts of amino acids were detected in the urine of the mutant mice. Most abundant alanine was mainly D-isomer and was determined to originate from the cell walls of intestinal bacteria. Abundant methionine was also mostly D-isomer and determined to derive from DL-methionine supplemented in the diet of the mice. Serine was mostly D-isomer and a portion of the D-serine was indicated to be synthesized in the body. These D-amino acids were not observed in the urine of normal mice. That means that they are constantly metabolized by DAO in normal mice. Therefore, we conclude that the metabolism of endogenous and exogenous D-amino acids is the physiological role of DAO.

Keywords: D-Amino-acid oxidase, physiological function, mutant mice, genetics, point mutation, aminoaciduria, urine


D−アミノ酸酸化酵素の生理的機能は何か?

金野柳一
獨協医科大学 微生物学教室
〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町字北小林880
TEL 0282-87-2131 FAX 0282-86-5616
E-mail: konno@dokkyomed.ac.jp

1.はじめに

 D−アミノ酸酸化酵素はL−アミノ酸の光学異性体であるD−アミノ酸の酸化的脱アミノ反応を触媒し、オキソ酸、過酸化水素、アンモニアを産生する酵素である[1]。この酵素は多くの生物種に存在する。高等動物の場合、主に腎臓、肝臓、脳に存在している[2]。しかしながら、この酵素の基質となるD−アミノ酸は高等動物にはほとんど存在しないと言われてきたので、この酵素のもつ生理的役割はまったく不明であった。私たちはなぜ高等動物がこのような不思議な酵素をもっているのかに興味をもって研究を行ってきた。

2.D−アミノ酸酸化酵素の突然変異体

 酵素の生理的役割を解明するには突然変異体を用いて解析することが有効な場合が多い。私たちはヒトに近いホニュウ類であること、サイズが小さいこと、世代時間が短いこと、遺伝的性質がはっきりしていることなどを考慮し、マウスを実験動物として研究を始めた。
 マウスの種々の系統で腎臓のD−アミノ酸酸化酵素活性を調べてみると雄の方が常に雌より活性が高いことがわかった[3]。これは男性ホルモンの影響と考えられた。なぜなら雄を去勢するとD−アミノ酸酸化酵素活性は雌のレベルにまで低下し、その個体にテストステロンを投与すると酵素活性はまたもとのレベルにまで回復するという事実[4]と一致するからである。
 雑系のddYマウスを調べたところ集団中にD−アミノ酸酸化酵素活性をもたない個体がいることがわかった[3]。そこでこの酵素活性をもたない個体をなんとか生きたまま分離できないかと考え,次のような仮説をたてた:少量のD−アミノ酸をマウスに経口投与すれば、それは小腸で吸収され、血中に入り、腎臓、肝臓に到達し、正常な個体の場合D−アミノ酸酸化酵素で代謝されるであろう、しかし、もしD−アミノ酸酸化酵素をもたない個体であれば吸収されたD−アミノ酸は代謝されずにやがては尿に排泄されるのではないか、もしそうならば尿中のD−アミノ酸のレベルを調べることによってD−アミノ酸酸化酵素をもたない個体を検出できるのではないかと。そこで飲料水に少量のD−メチオニンを混ぜてマウスに与え、翌日、新鮮尿を採取し、薄層クロマトグラフィーを行ったところ、他のマウスではみられないスポットを示す個体があった。このスポットは標準のD−メチオニンのスポットと一致していた。そこで実験に用いたすべてのマウスから腎臓を摘出し、D−アミノ酸酸化酵素活性を調べてみるとD−メチオニンのスポットを示したマウスのみがD−アミノ酸酸化酵素活性をもっていないことがわかった。D−メチオニンの代わりにD−フェニルアラニンを用いても同様な結果が得られた。このスクリーニング法により短時間で、無傷のD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスを分離することができた[5]。分離したマウスを交配し、得られた子供の兄妹交配を繰り返すことにより、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウス(ddY/DAO-)の系統を樹立した[3]。

3.D−アミノ酸酸化酵素の遺伝

 D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスとD−アミノ酸酸化酵素活性をもつ正常なマウスを交配するとその子供のマウスはD−アミノ酸酸化酵素活性をもっていたが、正常のものの約半分の活性を示した。この子供のマウスの雄と雌を交配してできた孫の世代では高い酵素活性をもつもの、中間の活性をもつもの、酵素活性をもたないものが約1:2:1の比で現れた。このことによりD−アミノ酸酸化酵素は1つの遺伝子によりコードされており、メンデル遺伝の中間雑種の遺伝をする事が明らかになった。そしてD−アミノ酸酸化酵素活性には正常な遺伝子を2個もつ個体は1個をもつ個体の倍の酵素活性をもつという遺伝子量効果があることもわかった[3]。
 D−アミノ酸酸化酵素はマウスの場合、主に腎臓と脳に存在している。D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスは腎臓にこの酵素活性をもっていないことで分離されたが、このマウスは脳にもD−アミノ酸酸化酵素活性をもっていなかった。D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスと正常マウスを交配し、得られた子供のマウス同士を更に交配し、孫の世代のマウスのD−アミノ酸酸化酵素活性を腎臓と脳で調べた。そうすると前の実験と同じく、高い酵素活性をもつもの、中間の活性をもつもの、酵素活性をもたないものが約1:2:1の比で現れた。この場合、腎臓に高い活性をもつ個体は常に脳でも高い活性を示し、腎臓で中間の活性を示す個体は脳でも中間の活性を示し、腎臓にD−アミノ酸酸化酵素活性をもたない個体は脳でもD−アミノ酸酸化酵素活性をもっていなかった。このことからマウスではD−アミノ酸酸化酵素遺伝子は1個しかなく、それが腎臓と脳で発現していることがわかった[6]。
 種々の系統のマウスとの交配による遺伝子の連鎖分析の結果、D−アミノ酸酸化酵素遺伝子は第5染色体の65cMに存在することがわかった[7]。さらにFISH法によりこの遺伝子は第5染色体E3-Fにマップされた[10]。ちなみにヒトのD−アミノ酸酸化酵素遺伝子は第12番染色体q23-24.1にマップされた[8]。この染色体領域はマウスとヒトでは相同である。D−アミノ酸酸化酵素のアミノ酸配列も哺乳類ではよく似ている。このようにD−アミノ酸酸化酵素は進化の過程で保存されていることから、この酵素は重要な生理的役割をもっているものと考えられる[8]。

4.D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスにおける酵素欠損の原因の解析

 D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスではD−アミノ酸酸化酵素活性が認められなかったが、その原因にはいろいろな可能性が考えられる。D−アミノ酸酸化酵素酵素の遺伝子が欠失している、遺伝子の転写が起こらない、プロセシングがうまく行われないためmRNAができない、転写が起こらない、異常なタンパク質ができるので酵素活性がない、などである。D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスではどの過程に異常があるかを調べた。まずD−アミノ酸酸化酵素遺伝子に大きな異常があるかどうかを調べるため、マウスからゲノムDNAを抽出し、種々の制限酵素で切断し、D−アミノ酸酸化酵素のcDNAをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスは他のマウスと同じハイブリダイゼーション・パターンを示したことから、D−アミノ酸酸化酵素遺伝子に大きな異常はないことがわかった[9]。
 次に、腎臓のホモジェネートをつくり、SDSゲル電気泳動を行い、膜に転写した後、D−アミノ酸酸化酵素抗体と酵素標識二次抗体を用いて、ブロッティングを行った。そうしたところ、D−アミノ酸酸化酵素活性をもたないミュータントマウスでも正常マウスと同じ大きさのD−アミノ酸酸化酵素タンパク質が存在していることがわかった。このタンパク質は正常マウスを同じく、細胞内小器官のペルオキシゾームに存在していた[10]。
 そこで腎臓からRNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを合成し、D−アミノ酸酸化酵素に特異的なプライマーを用いてPCR反応を行った。そうするとD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスでも正常マウスと同じ大きさのDNA断片が増幅された。これをベクターに組み込み大腸菌でクローニングし、その塩基配列を決定した。そうすると1,035塩基のコーディング領域の中間部の541番目の塩基が正常な場合GであるのがD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスではAになっていた。この塩基が変わると、正常な場合、181番目のアミノ酸残基がグリシンであるが、それがアルギニンに変化することがわかった。541番目の塩基以外、正常マウスとD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの塩基配列には違いがないことから、この塩基の点突然変異によりD−アミノ酸酸化酵素活性が消失したものと考えられた[11]。
 541番目の塩基の点突然変異がD−アミノ酸酸化酵素活性の消失の原因であることを証明するため、トランスフェクションによる発現実験を行った。D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスのD−アミノ酸酸化酵素cDNAを発現ベクターに組み込み、培養細胞にトランスフェクションすると、この細胞にD−アミノ酸酸化酵素タンパク質が発現されたが、D−アミノ酸酸化酵素活性は認められなかった。そこで541番目の塩基を正常のGに変えて、同じ実験を行ったところ、この場合はD−アミノ酸酸化酵素タンパク質の発現とD−アミノ酸酸化酵素活性が認められた。このことから451番目の塩基の点突然変異がD−アミノ酸酸化酵素活性消失の原因であるということが確かめられた[11]。

5.生体におけるD−アミノ酸の利用

 D−アミノ酸は自然界にはほとんど存在しないと言われてきたが、合成したD−アミノ酸を動物に与えると、動物はL−アミノ酸の代わりにD−アミノ酸を利用することが知られている。この場合、D−アミノ酸はD−アミノ酸酸化酵素により、オキソ酸に変換され、それがトランスアミナーゼの作用によりアミノ基を付加され、L−アミノ酸に変換されて利用されると考えられてきた[2]。そこでこの代謝経路が本当に正しいものかどうかを検証した。
 成体のD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスと正常マウスに必須アミノ酸であるL−フェニルアラニンを含まない餌を与えたところ、マウスの体重は日ごとに減少していった。この餌にL−フェニルアラニンを添加して与えると体重の変化はみられなかった。次に、D−フェニルアラニンを添加して与えると、正常マウスの体重の変化はみられなかったが、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの体重は日ごとに減少していった[12]。最後にD−フェニルアラニンからL−フェニルアラニンに変換される際の中間体のオキソ酸であるフェニルピルビン酸を添加した餌を与えるとD−アミノ酸酸化酵素欠損マウス、正常マウスとも体重の変化はみられなかった。これらの実験からD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスはD−フェニルアラニンをL−フェニルアラニンの代わりに利用できないこと、オキソ酸には代替作用があることがわかった。すなわちD−アミノ酸はD−アミノ酸酸化酵素により、オキソ酸に変換され、それがトランスアミナーゼの作用によりアミノ基を付加され、L−アミノ酸に変換されて利用されるという説は正しいことがわかった。そしてD−アミノ酸の代謝にはD−アミノ酸酸化酵素が必要不可欠であり、生体にはD−アミノ酸酸化酵素以外にD−アミノ酸を代謝する主要な酵素は存在しないことがわかった[12]。

6.D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスにおけるアミノ酸尿症

 D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスと正常マウスの尿を薄層クロマトグラフィーで展開し、ニンヒドリンで発色させたところD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿には正常マウスにはみられないスポットや正常マウスより濃いスポットがあることわかった。これらは標準のアミノ酸のスポットと一致したので、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿には正常マウスの尿より特定のアミノ酸の量が多いのではないかと考えられた。そこでイオン交換クロマトグラフィーを用いマウスの尿からアミノ酸を精製し、アミノ酸分析機でアミノ酸の量を測定した。その結果、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿には正常マウスの尿と比べて、約3倍のメチオニン、12倍のアラニン、2倍のセリンが含まれており、その他、プロリン、ロイシンなども多いことがわかった[13]。
 なぜD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿にはアミノ酸の量が多いのかを調べた。尿からアミノ酸を精製し、薄層クロマトグラフィーによりメチオニンを分離し、それを高速液体クロマトグラフィーによりD、L分割を行った。そうするとD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中のメチオニンはほとんどがD型であることがわかった。このD−メチオニンが何に由来するかを調べた。いろいろ調べて、マウスの飼料に由来するのではないかと考えられたので、マウスの飼料から遊離のメチオニンを抽出しD、L分割を行ってみたところ等量のD−メチオニンとL−メチオニンが検出された。このことから次のことがわかった。実験動物用の飼料は天然配合飼料で、いろいろな原料から作られているが、天然の原料だけではメチオニンが不足するため、飼料会社では合成のDL−メチオニンを添加して飼料を作製している。このD−メチオニンは腸で吸収され、血流にのって腎臓に到達し、腎臓に存在しているD−アミノ酸酸化酵素により代謝され、最終的にはL−メチオニンとして利用される。しかしD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスでは吸収したD−メチオニンを代謝できないので、それをそのまま尿に排泄するため、尿中のメチオニン濃度が正常マウスの尿より3倍も多くなっていると考えられる。そこでふだんに使用している会社の飼料に変えてD−メチオニン含量の少ない他社製の飼料を使ってD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスを飼育してみたところ、尿中のメチオニン量が減少することがわかった。ただこの2社の飼料はD−メチオニン含量以外にも組成が違うので、もともと使用している飼料の会社に依頼して添加するDL−メチオニンをすべてL−メチオニンに変更した特別製の飼料を作製した。その飼料は添加してあるメチオニン以外はすべてもともとの飼料と同じ組成である。このL−メチオニン置換飼料をD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスに与えたところ、尿中のメチオニン量は正常マウスのものと同じになったので、D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中のD−メチオニンは間違いなく飼料に添加されているDL−メチオニン由来であることが確かめられた[14]。D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中には少量のD−メチオニンスルフォン/メチオニンスルフォキシド(アミノ酸分析機ではこの両者を区別できない)が存在しているが、これはD−メチオニンが酸化されたためであると考えられる[15]。
 次にD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中のアラニンを調べたところ、ほとんどがD−アラニンであった[16]。マウスの飼料を変えても尿中のアラニン量に変化はみられなかったので、このD−アラニンは飼料由来ではないと考えられた。いろいろ調べてみると、細菌の細胞壁にはD−アラニンが存在していることがわかった。そこで尿中のD−アラニンは細菌の細胞壁由来ではないかと考えD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスに抗生物質を経口で投与したところ、尿中のアラニンの量が著しく減少することがわかった[17]。ただ抗生物質投与で変化がみとめられたから腸内細菌由来と考えるのは少し短絡的である。このことを証明するため無菌的条件下で妊娠マウスから帝王切開により胎児を摘出し、無菌環境下で飼育することにより無菌のD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスを作出した。このマウスの尿中のD−アラニンの量は微量なレベルまで減少した。この無菌マウスに大腸菌とビヒズス菌を投与して、腸内に定着させたマウスを作出し、尿を採取した。このマウスでは尿中に再びD−アラニンがみられるようになった。このマウスにさらに2種の腸内細菌を投与し、4種の細菌を腸内に定着させたマウスでは尿中のD−アラニンの量はさらに増加した。このことからD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中に存在するD−アラニンは腸内細菌由来であることが確かめられた[18]。
 D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿のセリンも多くがD型であった。抗生物質を投与しても尿中のD−セリンの量はあまり減少しなかった。餌を完全合成飼料に変えるとD−セリンの量は3割ぐらい減少した。マウスに餌を与えないで飢餓状態にするとさらにD−セリンの量が減少したので、尿中のD−セリンはかなりの部分が飼料に由来しているものと考えられた。しかし、この状態でもなお尿中にはかなりのD−セリンが存在していたので、尿中のD−セリンの一部は体内で合成されているのではないかと考えられた[19]。その間、アメリカの研究者たちによりラットの体内にはD−セリンとL−セリンの変換を行うラセマーゼが存在するという報告がなされた[20, 21]。このことからD−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中のD−セリンの一部は体内で合成されていることは間違いないものと考えられた。

7.終わりに

 D−アミノ酸酸化酵素欠損マウスの尿中には多量のD−メチオニン、D−アラニン、D−セリンなどが存在していた(Fig. 1)。D−メチオニンは飼料に添加されているDL-メチオニン由来であり、D−アラニンは腸内細菌の細胞壁由来であることがわかった。D−セリンはかなりの部分は飼料由来であるが、その一部は体内で合成されていると考えられた。これらのD−アミノ酸は尿だけでなく、体内の臓器にも蓄積しており、血液中にも存在していた。正常マウスではこれらのD−アミノ酸はほとんど検出されないことから、これらのD−アミノ酸はD−アミノ酸酸化酵素により常に代謝されているものと考えられる。これらの結果から、D−アミノ酸酸化酵素の生理的機能は内因性、外因性のD−アミノ酸の代謝にあるという結論に到った。

Fig.1. D- Aminoaciduria in mutanat mice lacking D-amino-acid oxidase. A large amounts of D-methionine, D-methionine sulfoxide/sulfone, D-alanine, D-serine and D-proline are present in the urine of mutant mice lacking D-amino-acid oxidase. Urinary D-methione and D-methionine sulfoxide/sulfone originate from D-methionine supplemented in the mouse diet. Urinary D-alanine derives from D-alanine in the cell walls of intestinal bacteria. A portion of urinary D-serine is synthesized in the body.

引用文献

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