A D-amino acid dehydrogenase and an alanine racemase in a hyperthermophile Pyrobaculum islandicum

Yoko Nagata, Mika Ito, Shigeru Toizaki, Takashi Sugizaki and Takaya Yamada

Department of Materials and Applied Chemistry, College of Science and Technology, Nihon University
1-8-14 Kanda, Surugadai, Chiyoda-Ku, Tokyo 101-8308 Japan
Fax: 03-3293-7572
E-mail: nagata@chem.cst.nihon-u.ac.jp

Abstract

Of archaea, methane-producing organisms do not possess D-enantiomers of amino acids. However, other archaea contain D-serine and D-aspartic acid. In order to confirm the presence of D-amino acids in archaea, we cultivated the hyperthermophile cells at 95℃, and searched for enzyme activities of D-amino acid production. Since a D-amino acid-dehydrogenase activity and an alanine-racemase activity were detected, we partially purified these enzymes. The optimum temperature of D-amino acid dehydrogenase was found to be 80℃, and the optimum pH was between 6.5 to 9.0. The enzyme activity was higher with D-proline as the substrate than with D-alanine. Alanine racemase activity was shown with both of the D- and L-alanine. In addition, the racemase showed some activity with L-serine, although the activity was less than 40% of that with L-alanine. The optimum temperature of the racemase was 40℃ with L-alanine as substrate, but no temperature dependency of the enzyme was observed with D-alanine.

Key words: D-amino acid; D-amino acid dehydrogenase; racemase; hyperthermophile; archaea


超好熱性古細菌 Pyrobaculum islandicum のD-アミノ酸脱水素酵素とアラニンラセマ−ゼ

長田 洋子、伊藤 美香、戸井崎 茂、杉崎 誉、山田 剛也
日本大学理工学部物質応用化学科
Fax: 03-3293-7572
E-mail: nagata@chem.cst.nihon-u.ac.jp

 筆者(長田)は生物のホモキラリテイ−が進化のどの時点で成立したのかについて興味を持ち、系統樹においてたがいに異なった位置にあるいくつかの生物についてD-アミノ酸含有量を調べてきた。その結果、D-アミノ酸、特にD-アラニン・D-グルタミン酸は真正細菌に高濃度に存在するが、多細胞生物(真核生物)である高等動物では特定の器官または組織を除いてほとんど検出されないことが示された。そこで生物界の残るもうひとつのグループである古細菌についても測定した。古細菌の細胞壁はペプチドグリカンを含まないので、D-アミノ酸の含量は低いと予想されていた。しかし筆者らの研究(1)では、メタン産生菌であるMethanosarcina barkeriにおけるD-アミノ酸濃度はKandlerらの結果(2)と一致して低かったが、高度好塩菌Halobacterium salinarum・超好熱性のPyrobaculum islandicumでは遊離型D-セリンとD-アスパラギン酸の濃度が他のD-アミノ酸より高く検出された。この結果は高等動物の特定の器官・組織においても高濃度のD-セリンとD-アスパラギン酸の存在が知られていることを考え合わせると興味深い。  筆者らは最適生育温度が100℃という嫌気性超好熱性古細菌Pyrobaculum islandicum(3)にD-アミノ酸の存在することを確認する目的で、D-アミノ酸を基質とする酵素の存在を検索した。その結果、嫌気性条件下で働く脱水素酵素とL-アラニンをD-アラニンに変換するアラニンラセマ−ゼの活性を検出することができた。これらの酵素の部分的精製と二、三の酵素的諸性質について明らかになった点について報告する。

1.D-アミノ酸脱水素酵素

【培養】

 Huberらにより記載された組成(表1)の培養液を入れ密栓した耐熱びんにDSM 4184を植菌し、嫌気性条件下95℃で1〜2日間培養後、遠心分離機により集菌した。



【精製】

集菌した菌体約30 gを1 mM phenyl methane sulfonyl fluoride (PMSF) を含む20 mM Na-リン酸バッファー(PH 6.1) に懸濁し、フレンチプレスで破砕、13,000 g_20 min遠心の上清を180,000 g_60 min遠心し、生じた沈殿を膜画分とした。これを界面活性剤を用いて可溶化し、硫安分画,DEAE Toyo-pearlイオン交換クロマトグラフィー,Sephadex G-75ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した。

【活性測定】

D-アミノ酸脱水素酵素の活性は、2,4-dichlorophenolindophenol(DCIP)法にて測定した。これは、本酵素の働きによりアミノ酸から奪われた水素がDCIPを還元し脱色する反応を600 nmにおける吸光度で測定する方法である(図1)。



【結果】

 図に示すように本酵素の最適温度は80℃、最適PHは6.5 ミ 9.0と幅広いことが明らかになった。基質としてD-アラニンよりD-プロリンの方により高い活性を持っていることも示された。



2.アラニンラセマ−ゼ

【培養】

D-アミノ酸脱水素酵素の場合と同様に行った。

【精製】

 湿重量5gの菌体に対し5倍量の10mM Na-リン酸バッファー (pH 7.2)、1mM (PMSF)、10μM pyridoxal 5'-phosphate (PLP)、1mM EDTAを加え、ホモジェナイザーで懸濁した。菌体を超音波破砕し、フレンチプレスをした後に13,000 g×30 min遠心分離し、無細胞抽出液を得た。これを硫安分画し、20〜45%飽和の画分を透析により脱塩後サンプルとして用いた。

【活性測定】

 調整した試料に50mM Tris-HCl 緩衝液 (pH 8.7)、10mM L型アミノ酸、0.1mM PLP、1mM 安息香酸を加え、各温度にて1時間反応させた。反応を止めるために5%になるようにTrichloroacetic acid (TCA) を加え、生じたタンパク質の沈殿を遠心操作で取り除き、Dowex 50W-8Xカラムにアミノ酸を吸着させ、4 N アンモニア水で溶出し遠心乾燥によりアンモニアを除いた。蒸留水に溶かしたアミノ酸に1-fluoro-2,4-dinitrophenyl-5-L-alanine amide (FDAA)、NaHCO3を加え、40℃で1時間反応させ、ジアステレオマー化した。薄層クロマトグラフィーによりFDAA-アミノ酸を回収し、50%メタノールで抽出・溶解した。これをNova Pack C18 (Waters) 逆相カラムを用いたHPLCで340 nmの吸光度を測定・解析し、D-,L-アミノ酸をそれぞれ定量した(4)。

【結果】

アラニン・セリン・プロリン・アスパラギン酸・グルタミン酸について酵素活性を測定したところ、アラニンが最良の基質であり、セリンに対してもアラニンの40%弱の活性が検出された。アラニンについてはL型からD型のへの変換率がD型からL型の場合よりも高かった(40℃において)。プロリン・アスパラギン酸・グルタミン酸に対しては活性が無かった(図4)。次にこの酵素活性の温度依存性を調べた。その結果、この菌の最適生育温度に近い90℃やD-アミノ酸脱水素酵素の最適温度80℃でラセマーゼ活性は低く、逆に温度が低くなると活性が高くなり、40℃で最高になった(図5)。



【考察】

既知のD-アミノ酸脱水素酵素はアミノ酸の種類に対する基質特異性は低く、P. islandicumの酵素もD型のアラニン・プロリン・フェニルアラニン・バリン・ロイシン・セリン・トレオニン・アスパラギン酸などを基質とする。しかし、立体異性に対する識別は厳しく、L-アミノ酸は基質にならない。一方、ラセマ−ゼはあるアミノ酸の両方の光学異性体を基質とするが、アミノ酸の種類に対する基質特異性は高く、1種類のアミノ酸にしか作用しない。P. islandicumのアラニンラセマ−ゼのように2種のアミノ酸を基質とするものは少数である。このラセマ−ゼは、L-アラニンを基質とする場合の温度依存性は顕著で40℃が最適温度であった。この温度は生育温度より著しく低いがその理由は不明である。これに対し、D-アラニンを基質とする場合は温度依存性が見られなかった。この理由も興味深いが未知である。今後、このラセマ−ゼの精製が進み、立体構造が明らかになればこれらの点も明らかになるであろう。P. islandicumの遊離型D-アミノ酸はセリン・アスパラギン酸に多いが、アスパラギン酸に対するラセマ−ゼ活性は検出されなかった。この菌におけるD-アスパラギン酸の由来も興味のある点である。

【引用文献】

1. Nagata, Y., Tanaka, K., Iida, T., Kera, Y., Yamada, R., Nakajima, Y., Fujiwara, T., Fukumori, Y. Yamanaka, T., Koga, Y., Tsuji, S. and Kawaguchi-Nagata, K. Occurrence of D-amino acids in a few archaea and dehydrogenase activities in hyperthermophile Pyrobaculum islandicum, Biochimica et Biophysica Acta 1435, 160-166 (1999).
2. Kandler, O. and König, H. Arch. Microbiol. 118, 141-152 (1978).
3. Huber, R., Kristjansson, K., J. and Stetter, O, K. Pyrobaculum gen. Nov., a new genus of neutrophilic, rod-shaped archaebacteria from continental solfataras growing optimally at 100℃, Arch Microbiol 149, 95-101 (1987).
4. Nagata, Y., Yamamoto, K. and Shimojo, T. Determination of D- and L-amino acids in mouse kidney by high-performance liquid chromatography, Journal of Chromatography 575, 147-152 (1992).

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